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特集 自己と他者 異なる価値観への想像力

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今回の特集は「自己と他者 異なる価値観への想像力」です。異なる価値観と出会ったときに、私たちの心に何が生じるのでしょうか。その心にどのように向き合えばよいでしょう。広く他者との違… もっと読む
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2022年3月の記事一覧

バター茶の味について思い巡らすこと(著述家・編集者・写真家:山本高樹)#自己と他者 異なる価値観への想像力

バター茶の味について思い巡らすこと(著述家・編集者・写真家:山本高樹)#自己と他者 異なる価値観への想像力

 チベット文化圏で幅広く飲まれている飲み物の一つに、バター茶がある。チベット本土ではスーチャ、インド北部のラダックではグルグル・チャなどと呼ばれている。

 いつ頃からチベットでバター茶が飲まれるようになったのか、その始まりは定かではない。11世紀頃、インドの高僧アティシャが西チベットのグゲ王国を訪れた際に、王から献上されたバター茶を飲んだところ、長旅で消耗していた体力と気力がみるみるうちに回復し

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親子の関係性における「自己と他者」:情緒的利用可能性の大切さ(東京大学教授:遠藤利彦)#自己と他者 異なる価値観への想像力

親子の関係性における「自己と他者」:情緒的利用可能性の大切さ(東京大学教授:遠藤利彦)#自己と他者 異なる価値観への想像力

行き過ぎた「敏感性」の危うさ 従来、発達心理学の領域では、子どもの健全な心の発達を支え促す養育者側の要件として「敏感性」の重要性が強調されてきました。平たく言えば、敏感性とは、養育者が子どもの心身の状態および表情や発声といったシグナルを的確に読み取り、素早く応答してあげることを指して言います。そして、現にこれまでの多くの実証研究において、養育者の敏感性の高さが、概して、子どもとの安定した関係性の構

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コーダという子どもたちのこと:きこえない親をもつきこえる子ども(中津真美:東京大学バリアフリー支援室特任助教)#自己と他者 異なる価値観への想像力

コーダという子どもたちのこと:きこえない親をもつきこえる子ども(中津真美:東京大学バリアフリー支援室特任助教)#自己と他者 異なる価値観への想像力

「コーダ」という言葉をご存じでしょうか きこえない親をもつきこえる子どものことを「コーダ」(Children of deaf adult/s:CODA)と呼ぶことがあります。両親ともきこえなくても、どちらか一方の親だけがきこえなくても、また、親のきこえの程度や、親がろう者であるか難聴者であるかにも関わらず、きこえる子どもは皆コーダと定義されます(CODA International)。ここでもまた

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