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特集 自己と他者 異なる価値観への想像力

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今回の特集は「自己と他者 異なる価値観への想像力」です。異なる価値観と出会ったときに、私たちの心に何が生じるのでしょうか。その心にどのように向き合えばよいでしょう。広く他者との違… もっと読む
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2022年5月の記事一覧

いじめにおける自己と他者(山梨大学教育学部教授:若本純子) #自己と他者 異なる価値観への想像力

いじめにおける自己と他者(山梨大学教育学部教授:若本純子) #自己と他者 異なる価値観への想像力

はじめに 私は,いじめにおける自己と他者は入れ子状の関係にあり,そのありようを最も端的に体現しているのは「傍観者」である,と考えています。昨今は,いじめ対策でも,被害者の苦痛を共感的に捉え,傍観者を仲裁者に変えていこうという指針が示され始めています。しかし,エビデンスに基づくと,いじめを傍観する「自己」が重視している「他者」は,被害者ではないようです。

傍観者とは,級友から見られている自己 われ

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異なる価値観の人との対話のために(東京学芸大学教育学部教授:松尾直博) #自己と他者 異なる価値観への想像力

異なる価値観の人との対話のために(東京学芸大学教育学部教授:松尾直博) #自己と他者 異なる価値観への想像力

人の気持ちを慮る力は弱くなっているのか? 「今の子どもは自分勝手だ」「自己中心的な子どもが増えた」という意見を聞いた時、皆さんはどう思うでしょうか。また、「今の大人は自分勝手だ」「自己中心的な大人が増えた」という意見を聞いた時、皆さんはどう思うでしょうか。「そうそう、そうだよね」と思う人もいれば、「いや、そんなことはないよ」と思う人もいるでしょう。

 『児童心理』(金子書房)の1969年12月号

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ASD当事者の間にある多様性を語ることの難しさ(ASD当事者:高森明)#自己と他者 異なる価値観への想像力

ASD当事者の間にある多様性を語ることの難しさ(ASD当事者:高森明)#自己と他者 異なる価値観への想像力

はじめに ASD(自閉症スペクトラム)当事者である筆者が示したいことは、ASD当事者がASD当事者同士の間にある多様性と異なる価値観に対して想像力を持つことの難しさである。
 筆者は10年ほど前まで、主に自らの経験を土台にして多様な存在の一つであるASD当事者について積極的に情報発信を行ってきた。しかし、その方法ではASD当事者の間にある多様性を説明することはとてもじゃないができないと考え、自己語

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自己と他者と傷つき(金沢大学教授:岡田努先生)#自己と他者 異なる価値観への想像力

自己と他者と傷つき(金沢大学教授:岡田努先生)#自己と他者 異なる価値観への想像力

傷つくことを恐れる関係性 現代の日本の若者は、自分が傷つくことを恐れ、距離をとった関わりになってしまう、あるいは他人からどのように見えるかを気にして、自分の本音を出せなくなっている、とよく言われます。
 これは本当のことなのでしょうか?そして、そういう付き合い方は本当に好ましくないことなのでしょうか?ここではそうした視点から現代の若者の対人関係について述べてみたいと思います。

そもそも若者の人間

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