【ケース1まとめ!】ズバッと解決ファイル4U ~もしも、単位の変換がわかりにくい子がいたら?~(阿部利彦:星槎大学大学院教育実践研究科教授)
今回はこれまでご紹介してきた「単位変換のつまずき」に対する支援のまとめです!再度、阿部先生にご登場いただき、澳塩先生、上條先生の支援を振り返りながら、コツやポイント、大切なことズバッとまとめていただきます。
それでは以下より本編スタートです!
つまずきの背景を知る
前回上條先生が述べているように、単位変換に限らず、子どもたちが算数・数学の問題を間違える場合、その原因がすべて計算ミスと捉えられてしまうことが多くあります。そのため、「問題文をよく読んで」とか「慎重に」「よく確かめて」という助言にとどまってしまいがちです。
算数にも多様なつまずき方があり、そこを子どもと一緒につきとめていく作業が必要となるわけです。しかし、どこで間違ったのか失敗を振り返ることは、大人にとっても子どもにとってもしんどい作業です。子どもたちの自尊感情がゆらぐことにもつながりかねません。
また「どこがわからないの?」といった聞き方では、つまずきの背景を探ることは難しくなります。「どこがわからないのか」がわからないのが、つまずいている子どもたちだからです。
支援者側がつまずきのバリエーションを把握した上でその子のつまずきを読み解き、その子にあった声かけやヒントの提示によって、今まで見てきたはずの問題の新たな見方を子ども自身がつかんでいけるように応援していきたいものです。
むすびつける
学びにつまずきのある子どもたちは、これまでの経験や知識あるいは前時までに学んできたことを本時の学習内容と関連づけて応用することが苦手です。そのために、私は「むすびつける」「関連づける」「つなげる」工夫が必要だと考えています。
算数では、まず「数字と読み方」「半具体物と数字」「数字と数量イメージ」がむすびついていなければなりません。本ケースのワタル君は「数字と数量イメージ」がむすびつきにくいお子さんなのでしょう。この、数をイメージ化させる指導というのはなかなかに難しいところです。
そこで、澳塩先生はこのイメージを形作るために、個別指導の利点をいかし「見る・操作する・考える」ことにじっくり取り組ませるとよい、と提案しています。また感覚とイメージを結びつける方法も紹介してくれています。
上條先生は、たとえばcmを日常生活場面の長さに置き換える言葉かけによって量感をイメージできるように支援しています。
子どもの気持ちを大切にした支援
「間違えてもいい」「教室は間違えるところだ」というのは、大切な考え方です。しかし、これは自己肯定感が高いからこそ成り立つことなのかもしれません。
これは前回の上條先生のまとめの言葉です。私は「間違いから学ぶことができるクラス」を目指すことが重要だと考えていますが、そうは言っても、「間違いを恐れずトライすること」は学習に苦手意識がある子にとってはハードルが高いことなのかもしれないと改めて考えさせられました。
間違いを恐れ、笑ってごまかすしかない子どもたちの気持ちにもアンテナを高くしていく必要があるのでしょう。そして、「間違いを大事にする」だけでなく、ワタル君のようなお子さんが「わかった」「間違わずにできた」という経験を積み重ねていけるように支援していきたいものです。
そして、澳塩先生の言葉、子どもたちに「誤りを謝らせない」ように配慮することで「間違いから学び合えるクラス」に一歩近づくことができるのではないでしょうか。
いかがだったでしょうか?つまずきを抱える子どもたちへ接する “姿勢” の大切さも改めて学びになりました。今回のまとめをもって、「単位変換のつまずき」を取り扱ったケース1は終了です。
さて、ケース1は終わりますが、これからケース2も公開していきます!ケース2は10月からスタートしますので引き続きチェックしてください。
次は「時計」に関するつまずきの事例です。どんなつまずきがあって、どんな支援が展開されるのでしょうか…?
ケース2も充実の内容です!ぜひお見逃しなく!
執筆者プロフィール
阿部利彦(あべ・としひこ)
星槎大学大学院教育実践研究科教授。
専門は特別支援教育、教育のユニバーサルデザイン、発達につまずきのある子の魅力やサポート法について、講演会・教員研修に全国を飛び回る。
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