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【第9回】子どもたちのSOSを受け止め、サポートする関わり方 その2(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方
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【第9回】子どもたちのSOSを受け止め、サポートする関わり方 その2(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

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 今回も、子どもたちのSOSを受け止め、サポートする関わり方について書いていきたいと思います。今回は、やや難しい状況でどんなふうに話を聞き、どんなふうに関わっていくのかについて解説します。

子どもが今直面している困難を理解する

 子どものSOSを受け止めるには、子どもが感じている辛さや苦しさを理解することが大切です。つまり、子どもが今直面している困難を理解することが重要なのです。

 子どもが直面している困難は、色々な表現で語られます。例えば、「死にたい」と訴える子どもの話しを聞いていくと、「学校も教室も友達もイヤだ」「何も楽しいことなんかない」などと、自分自身が感じている辛さを話してくれることがあります。こういった辛い状況について話してくれること自体は素晴らしいことなのですが、「学校も教室も友達もイヤだ」「何も楽しいことなんかない」という言葉をそのまま理解するだけでは十分ではありません。それらの言葉の具体的な中身をリアルに理解することが大切なのです。

 例えば、「学校も教室も友達もイヤだ」という言葉の具体的な中身はどういうことなのでしょうか? 例えば、授業中に指名された時に答えを間違えてしまったことを同じクラスのA君に笑われて、大きなショックを受けて不安が強くなったのかもしれません。いつもよく話していたBさんに話しかけたら無視されてしまって、不安や寂しさを強く感じたのかもしれません。他にも、本当に色々な可能性があると考えられます。つまり、「学校も教室も友達もイヤだ」という言葉の中身はほとんど何も分かっていないのです。だからこそ、「この子は、学校も教室も友達もイヤなんだ」という理解ではまだまだ不十分なのです。

 ここで、周り道になりますが、シンプルな例を通して考えてみます。宿題をさせようとしても「宿題はイヤだ」と言ってなかなか取り組めない子どもがいるとします。その子に話を聞くと「漢字ドリルがイヤ」と言ってくれました。ここで、「ああ、漢字ドリルがイヤなんだなあ」と理解するだけでは十分ではありません。実は「漢字ドリルがイヤ」なのではないからです。突き詰めて考えると、漢字ドリルをするときに自分自身の中に生じる「感情や感覚がイヤ」なのです。例えば、何度も同じ漢字を書くときにイライラする感覚が生じるため、そのイライラがイヤだという場合があります。この場合、「漢字ドリルがイヤ」なのではなく、本質的には、同じ漢字を書くときに「イライラするのがイヤ」なのです。他にも、ドリルを開いたときに沢山の漢字が目に入ってうんざりしてイヤになる場合もあるかもしれません。この場合は、うんざりするのがイヤなのです。

 こんなふうに理解できると、その子も宿題に取り組める可能性がでてきます。「漢字ドリルがイヤ」という理解の場合、宿題で漢字ドリルに取り組む時のイライラやうんざり感を我慢して取り組むか、イライラやうんざり感が我慢できないから宿題をやらないかという2つの選択肢しかありません。「イライラするのがイヤ」または、「うんざりしてイヤになる」と理解できれば、「イライラ」「うんざり感」に対処することが大切だと分かります。そして、そういった不快な感情や感覚への対処方法が見つかれば、漢字ドリルに取り組みやすくなるのです。

 こういったことから、「宿題がイヤ」という言葉の中身、つまり、本当は何がイヤなのかということを理解することが大切なのです。その上で、「宿題がイヤなんだね」と言葉を返すのではなく、「イライラするのがイヤなんだね」とか「うんざりしちゃうからイヤになるんだね」と言葉を返すことが大切です。子どもがその言葉に反応して「そうなんだよ。イライラ(うんざり)するのがイヤなんだよ。」と、応えてくれるようになったら、イライラやうんざり感への対処方法を考える準備ができたと言えます。

 少し回り道をしましたが、「学校も教室も友達もイヤだ」という言葉も同じです。「学校も教室も友達もイヤ」なのではないのです。教室や友達との関わりの中で生じた自分自身の感情や感覚がイヤだと捉えることが大切なのです。その感情や感覚を具体的に理解するためには、子ども自身から少しずつ話を聞いていくことが大切です。そのためには、聞き方の工夫が必要になります。

 例えば、「どうして学校も教室も友達もイヤなの?」と質問してみることもできるかもしれません。しかし、「どうして~?」という質問は、答えるのが難しい質問です。子どもが答えられなくて、やり取りが行き詰まってしまうかもしれません。また、「どうして~?」という質問には、相手を非難する雰囲気が含まれています。そのため、聞かれた子どもが自分を非難されたと感じ、話すことが怖くなってしまうかもしれません。こういった背景があるため、子どもがそう思う理由を知りたい場合でも「どうして~?」という質問はお勧めできません。その代わりに、「どんな時に~と感じるの?」と聞いてみることをお勧めします。また、「特にどんな時に?」と聞くことも良いと思います。そんなふうに聞かれた子どもは、そう感じる具体的な場面を思い浮かべるはずです。具体的な場面を語ってくれたら、その場面でどんな感情や感覚が生じたのかを丁寧に聞いていけば良いのです。たとえば、「英語の授業中に、ランダムに誰かを指名して答えさせる時」などという答えが返ってくるかもしれません。その時に、どんな感情や感覚が生じているのかを聞いてみるのです。「答えたときに周りの子が気になって怖くなる」などということが分かるかもしれません。指名されることそのものよりも、周囲の反応に不安を感じていることが分かります。その理解は「学校も教室も友達もイヤ」という理解よりも、具体的でリアルな理解だと言えるでしょう。こういった具体的でリアルな理解が、その子どもが直面している困難を理解することなのです。

 「学校も教室も友達もイヤ」という理解では、学校を避け、教室を避け、友達を避けるしか対処方法はありません。上記のように理解すると、その子どもが直面している困難の中心は、周囲の反応に対する不安なのです。その不安がその子どもの感じている困難のいわば本体なのですが、それが教室や学校と密接につながっているので、「学校も教室も友達もイヤ」となってしまうのです。

 このように理解することができれば、「怖くなっちゃうね」などと子どもの感情を受け止めつつ伝え返すことができます。そして、その不安に対処することができれば、学校や教室や友達を避ける必要は少なくなると考えられます。

子どもが話さない場合

 子どもをサポートしようと話を聞き、やり取りを重ねていく中で、子どもが急に黙りこくってしまうことがあります。また、そもそもはじめからほとんど話さない、全く話さないこともあります。こういった場合、子どもが反抗しているように感じたり、こちらの働きかけを拒絶しているのだと捉えることが多いかもしれません。どのように関わっていけばよいか非常に迷う場面だと思います。

 このような場合でも、まずは大人に反抗したり、関わりを拒絶しているわけではないと捉えることをおすすめします。危機に直面している子どもたちは、すでにその状況から受けた刺激や情報で心がいっぱいになっている可能性が高いのです。反抗したり拒絶しているように見えるのは、さらに刺激や情報が過多になることを避けていることがほとんどです。そこに大人が関わろうとすると、さらに刺激や情報が過多になり、反応や処理ができなくなってしまいます。

 そういった状態にあることについて、大人も子どもも気づくことがスタートです。「考えるだけで、気持ちがいっぱいいっぱいになっちゃうね」「心がいろんなことでいっぱいで苦しいね」などと投げかけてみることが第一歩だと思います。ちいさく頷くなど、肯定的な反応が得られることが多いと思います。「そうだね」などと受け止めつつ、そして、「話せるところから話してね」「準備ができたら教えて」などと伝えてみます。「しばらくここにいるよ」などと伝えて、そばで待ってみることも1つです。

 こういった関わりを行っても、子どもから話が出ないこともあります。その場合は、こちらの投げかけに対して、自分がどう応えたいか子どもなりに分っているかどうかを確認することをお勧めします。まずは、「さっき~って聞いたんだけど、○○さんは、その内容というか答えは、自分自身では分かってる感じ?」などと聞いてみます。もし、それにうなずいたり、「うん」などと返事が返ってくるのであれば、自分では分かっているということを肯定的に伝え返すのが大切です。例えば、「自分で分かっているというのは大切だね。自分で自分の事が分かっていれば、自分で自分を助けてあげやすくなるよね。それが分かって良かった。」などと伝えたいところです。

 子どもが自分自身を理解することと大人がその子どもを理解することのどちらが大切かということを考えると、本質的には子どもが自分自身を理解することの方が大切だと思います。子どもが、自分で分かっているというのであれば、それはそれで意味があることです。この場合、子どもと気持ちや考えの内容を共有することはできないのですが、子ども自身が自分では分かっていることが肯定的に共有されています。子どもの気持ちや考えを共有して一緒に考えることは意味のあることですが、無理にそこまで進んでいこうとすることは、今の子どもを傷つけてしまう可能性が高いと思います。そうではなく、今の関係にとどまり、その肯定的な側面を共有しようとすることが、子どもをサポートすることになると思います。

他からのサポートを得るように促す

 子どもが自殺の具体的な計画を立てていたり、道具を準備していたりすることが分かった場合には、保護者や先生方など子どもの身近にいる大人と情報を共有して、子どもの安全確保を最優先で行う必要があります。また、死んでしまいたいといった希死念慮を持っていることやリストカットなどの自傷を行っていることが分かったときにも、子どもの身近な大人のサポートを得られるように情報共有することが望まれます。カウンセリングでも、こういった場合は守秘義務の例外とされ、生命や身体の安全を最優先として情報共有を行うべきであるとされています。この場合、事前に情報共有について説明し了解を得ること(インフォームドコンセント)が大切だと考えられます(出口、2009)。

 勝手に情報共有をしてしまうことは、子どもからの信頼を失う行為です。そのため、カウンセラーであってもなくても、まずは子どもに丁寧に説明して、了解を得ることが大切なのです。その場合、「死にたいっていうことは、放っておけないし、心配だからそのことは、おうちの人に伝えなくちゃならないよ。」などと伝えることが多いかもしれません。しかし、こういった方法で説明し了解を得ようとすると、子どもから激しい抵抗にあったり、関係が切れてしまったりする可能性があります。「放ってはおけない」ということも「心配だから」ということも、大人の側の捉え方です。この言い方では、大人の都合を子どもに押しつけているだけになってしまいます。子どもは大人に裏切られたような気持ちや見捨てられたような気持ちを感じる可能性が高いように思われます。大人の側の捉え方から情報共有の必要性を伝えるのではなく、その子どもの困難さや必要性に沿って情報共有を提案することが大切です。私の場合ですが、「あなたには(もっと)味方が必要だ」という言い方で提案することが良くあります。

 困難に直面している子どもたちは、誰にも知られずにその困難に対処していることが少なくありません。言わば孤立無援の状態で一人で辛い思いを抱えながら日々の生活を送っています。子どもから話を聞くなかで、「あなたは、一人で頑張ってきたんだね」と肯定的に伝え、「味方が必要だね」と周囲のサポートの必要性を伝えておきます。さらに、誰が味方になってくれそうか、誰が味方になってくれたら心強いかを聞きます。そして、その人にどんなことを分かってほしいかを聞きます。たとえば、「今日は、色々お話してくれたでしょ。その中でここは分かってほしいとか、こんなふうに理解してほしいっていうのは、何か思いつく?」という感じです。子ども自身が周囲の大人に分かってほしいことを元にして、何をどのように伝えるのかを確認していきます。

 このプロセスによって「自傷行為をしている」という事実関係を伝えるということでは不十分だと分かります。例えば、「辛くてたまらないときがあって、そういう時に自分の気持ちをリセットするために自傷行為をしてしまうことがある。でも、本人自身はできれば自傷行為をやらなくて済むようになりたいと思っている。」ということが大人に分かって欲しいことかもしれません。それに沿って伝えるように提案すれば、子どもの同意が得られる可能性が高いのです。こんなふうに、分かってもらうために伝えるという姿勢で情報共有を促すと、子どもの抵抗感は大きく低下すると私は感じています。

 それでも、「味方になってくれそうな人はいない」などという反応が返ってくることもあります。その場合、その子どもは強い孤立を感じているのだと想像されます。その孤立感を受け止めつつ、「味方になってくれそうにないけど、もし味方になってくれるとしたら、どの人が少しだけでも味方になってくれたら心強い?」などと粘り強く投げかけます。この投げかけに答えがあれば、その人に味方になってもらうための作戦を一緒に考えることができます。

 なお、医療機関の受診を促す場合も基本的に同じ姿勢で促します。病気だからとか、症状が重いから等の理由ではなく、自分の力を発揮するためには、お薬の力を借りることが大切だと説明します。例えば、「睡眠をしっかり取れば、脳が元気になって力を発揮しやすい」、「心を整えたら、あなたの良い面が発揮できる」などと伝えて、服薬の必要性を理解してもらうことが大切だと思います。

まとめ

 今回お伝えした内容は、非常に簡潔に言えば、子どもの立場に立って話を聞き、関わりを持つということです。しかし、「子どもの立場に立つ」ということは、簡単なことではありません。今直面している困難も大人の目から見て捉えるのでは不十分です。子どものリアルな感情や感覚を理解しようとすることが大切なのです。また、話さない場合も、子どもの心の中で何が生じているかを捉え、そこに関わっていくことが大切です。他からのサポートを得るように促す場合も、子どもの困難さや必要性に沿って促すことが重要なのです。

文献
出口治男(監修)2009 カウンセラーのための法律相談-心理援助を支える実践的Q&A- 新曜社

執筆者プロフィール

半田一郎(はんだ・いちろう)
スクールカウンセラー・子育てカウンセリング・リソースポート代表。
公認心理師・臨床心理士・学校心理士スーパーバイザー。

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