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[第4回]怒りの感情にアサーションで向かい合う:前編(園田雅代:創価大学大学院臨床心理専修課程教授) #アサーション

 日常の中で余裕を失っている状況では、不安やつらさ、自由のきかないストレスなどから、時に本人が思ってもみなかったかたちで、怒りは生じてしまうものです。
 怒りの感情について、どのように理解したらよいのでしょうか。怒りが生じるしくみをわかり、怒りの感情に対してどのように向き合えばよいのかがわかると、相手に対して不用意に怒りをぶつけてしまうことも減るかもしれません。
 この連載では、「私はOK、あなたもOK」という自他尊重の「アサーション」の視点を紹介してきました。最後のテーマとして、前後編の2回にわたり、アサーションの視点から怒りの感情とその表現について、臨床心理学がご専門の園田雅代先生に、ご解説いただきます。

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それぞれにつらさを抱えた状況

 今年は春先から自粛生活が始まり、外出しにくい日々がずっと続くという未曽有の状況となりました。これまで、ストレスの解消として、人に会っておしゃべりをする、飲み会をする、はたまたウィンドウショッピングをする、スポーツ観戦をする、映画や音楽会に行くといった方法をとっていた人たちには、そのようなことが自由に行えないこの数か月となり、しんどい思いになることも多々あったことでしょう。

 しかも、このコロナウィルスの収束には、なかなか見通しがもてません。しんどいことが続いても、それがいついつまでというはっきりした目安があるのならば、しのぎやすいかもしれませんが、そのあたりのこともよくわかりません。この「あいまいな状況に耐える力」を使い続けることは、一般に私たちにかなりの負荷をかけるものです。

 さらに個別の状況によっては、経済的な心配に押しつぶされそうになっている方もいるでしょう。また「ステイホーム」といわれても、それぞれの家庭によっては家族関係、夫婦関係、親子関係、同胞関係、そのほかの人間関係の影響で、余計にストレスであったり、リモートワークに集中できにくかったりというストレスもありえるはずです。

 また、ステイホームでも「新しい生活に楽しみを見出そう」「前向きに生活すべし」との呼びかけが、そうできにくい自分を卑下したり落ち込ませたりする、新たな要因になっていたりするかもしれません。

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自分のことを過度に責めない

 このような現実のなかで、立場・考え方・おかれている背景の違いなどから、これまで意識していなかった人間関係について問題が顕在化し、どのような行動をとったらよいのか悩んでいらっしゃる方も多いように思います。そして、以前のご自分に比べて、最近の自分がイライラしやすくなったと感じ、たとえば怒りの感情にうまく対処できず、時には思いがけない攻撃的な言動をして、あとで後悔にさいなまれたりするような方も多いのではないかと想像します。もしかしたら八つ当たり弱い者いじめのようなことをしたり、暴言を吐いてしまったりという経験がある人もいるかもしれません。

 あるいは逆に、「怒りを出してはいけない、イライラしてはいけない。誰もが同じようにしんどい状況なのだから、とにかくがまんしなくては」と、自分のイライラする感情を押し殺したままでいて、それで余計に気持ちがささくれだったり、落ち込んだりしている人もおられるかもしれません。

 本当にこのような状況はしんどいですし、そして人間にいろいろそなわっている感情(たとえば喜怒哀楽)の中でも「怒りの感情」につきあうのは、最も難しいといわれています。いわば、「状況:マイナス、感情:マイナス」の掛け算なのですから、算数ならプラスになってくれてもよさそうなものですが、そうとはいかず、通常は、いっそう大きなマイナスになりやすいものです。ですから、もし上記のような心情になっている方がいて、「自分はこの頃、イライラしやすくなっていてなんとダメ人間なんだろう」とか、「怒りを出したりすることは許されない。どんなに苦しくてもがまんしないといけない。そうできなければ自分は器の小さい人間だ」などと考えている方がいたら、まず、「どうぞご自分を過度に責めないでください」「そんなふうに過剰にご自分に負荷をかけないでほしいです」と申し上げたいです。

 以下には、アサーションからとらえる怒りの感情について、そしてその表現のしかたについて、ポイントを整理して述べてまいります。

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私たち人間が怒りの気持ちをいだくのは、ごく自然である

 アサーションという考え方のなかでは、怒りの感情を悪しきもの、感じてはいけないもの、そして表現してはまずいもの、とはとらえません。

 怒りは、自分が何か不安や脅威を感じていたり、あるいは自分の欲求がまわりの人にうまく受け取ってもらえないなどの欲求不満になっていたりするときに生まれやすいものです。そう考えるなら、怒りの芽は、もともとはごく自然な感情であること、しかも今のこの状況では、怒りは私たちがいだきやすい感情であることもよくご理解いただけるはずです。

 一般に、怒りの感情や表現については誤解されやすく、「感じたり、表現したりしてはならない」と、とらえられがちです。でも、本当にまずいのは、その怒りの感情を「攻撃」で表出するということなのです。

 たとえば、「直接的な攻撃」であれば、暴言を吐くとか暴力をふるうということが、あてはまります。あるいは「間接的な攻撃」であれば、陰湿な嫌味を言うとか、相手を無視するとか、ネットなどで匿名のまま誰かを徹底的に攻撃するということが、あてはまります。世の中で怒りを表出する場面の大半は、こういった「攻撃」スタイルであるがゆえに、私たちは「怒り=攻撃」と思い込みやすいのです。

 しかし、これは間違いです。直接的な攻撃も間接的な攻撃も、それを行っている人にとって一時的にはストレスの解消になるかもしれませんが、真の満足や充足感、幸福感にはつながりにくいものです。それゆえ、同様のことが繰り返されたり、あるいはどんどんその言動がエスカレートしたりという状況におちいりやすいのです。

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「怒り」を攻撃で表わすのも、押し殺すのもよくない

 このように、私たちは世の中全般で、あるいは自分が身を置いてきた家庭や学校、職場などで、怒りの上手な表現のしかたを目の当たりにできる機会はあまり多くもてているとはいえません。そのために「怒りは出してはいけない」「怒りを出すのはタブー」「そんなことをしたら人間関係が修復不能になってしまう」と、思い込みやすくなってしまいます。

 それで、たとえ自分の怒りの気持ちに気づいたとしても、とにかくそれを押し殺そうとすることも多々あります。そのようにずっとがまんしていると、人によっては、意欲やエネルギーがどんどん失われていったり、または体に何らかの不調が出たり、または思いがけないときにキレたように爆発したり、八つ当たりをしたり、ということも生じがちです。

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 怒りは、とにかくがまんして一切出さない」というのもよくないということ。このことも、どうぞ認識していただければと切に願います。
(後編へ続く)

著者プロフィール

園田雅代(そのだ・まさよ)
創価大学大学院臨床心理専修課程教授。専門は臨床心理学。アサーションについては、とくに、子どものためのアサーション、対人援助職者のアサーション、怒りのアサーションの実践等に力を入れてきている。
✿ 金子書房での主な書籍
教師のためのアサーション』(編著,2002年)
「『自己の語り』研究」(『児童心理学の進歩』2005年版,159-180頁)

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