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【特別寄稿】エビデンスに基づく教育現場でのいじめ対応の必要性(公益社団法人 子どもの発達科学研究所所長/主席研究員:和久田学) #子どものいじめ被害をなくすために私たちができること
いじめ問題に関する違和感 いじめの問題というと、皆さんは何を思い浮かべますか? ご自分の体験を思い出した人もいるでしょうが、多くの方が、社会問題化した、いくつかの「いじめ事件」を思い浮かべるのではないでしょうか。例えば、いじめ防止対策推進法(以下、法)(資料1)成立のきっかけになった大津中2いじめ自殺事件をはじめ、今でも数ヶ月に一回はニュースになる悲しい事件などです。 さらに皆さんの中には「いじめ重大事態」というものを思い浮かべる方がいるかもしれません。いじめ重大事態
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心理職の積極的な倫理、みんなで取り組む倫理:保身的な倫理、個人に閉じた倫理を超えて(後編)(京都大学学生総合支援機構教授:杉原保史) #心理学と倫理
2.みんなで取り組む予防的な倫理(1)現在の倫理教育が抱えている3つの課題 私は、職能団体において倫理問題に関わる中で、倫理問題は予防こそが重要だという思いを強くしてきました。倫理問題は、職能団体への訴えや民事訴訟などにまで発展すると、本当に大変で、当事者であるクライエントはもちろん、加害者とされた心理職にも、その職場や組織にも、大きな負担がかかります。重大な倫理違反が生じれば、心理職全体の社会的信用にもダメージが及びます。 倫理違反がまったく無くなるといったことは
心理職の積極的な倫理、みんなで取り組む倫理:保身的な倫理、個人に閉じた倫理を超えて(前編)(京都大学学生総合支援機構教授:杉原保史) #心理学と倫理
1.心理支援にとっての倫理の位置づけ 心理職の実践において、倫理はもっとも重要な基盤です。心理支援の実践は、理論よりも、技法よりも、エビデンスよりも、まず倫理から出発するべきものです。なぜなら、理論も、技法も、エビデンスも、倫理の視点から常に振り返って慎重に検討していなければ、それらに忠実に依拠した支援がクライエントを傷つけることがあるからです。科学的に正しいことは重要ですが、それだけでクライエントにとって有用な実践になると保証されるわけではありません。科学の歴史を振り返れ
第3回 因果関係の探究における標準偏回帰係数の意味(関西学院大学社会学部教授:吉田寿夫) #偏回帰係数についてあらためて考える
説明・因果関係の探究における標準偏回帰係数の意味[1] 先に記したように,実際に報告されている(心理学的)研究においては,重回帰分析は,説明ないし因果関係の探究のために用いられています。そして,各説明変数の基準変数に対する因果効果(前者が大きくなるにつれて後者も大きくなるか,前者が大きくなるにつれて後者は小さくなるかという意味での影響の方向と,その影響の強さ)に関しては,通常,標準偏回帰係数に基づいて考察がなされています。しかし,林・黒木(2016)や狩野(2002),Pe
人の心は「測れる」のか?――心理測定における「測定」と「心」(公益社団法人国際経済労働研究所/荒川出版会:仲嶺真) #心理統計を探検する
潜在変数モデルが仮定する「心の測定」 心理測定(とくに心理尺度による「測定」)では、多くの場合、潜在変数モデル(結果指標モデル、反映的モデル)が仮定されます。潜在変数モデルとは、複数の項目反応に共通の原因があり、諸項目への反応はその原因を反映しているとする考え方です(図1:Borsboom, 2005 仲嶺監訳 2022)。 しかし、この考え方に基づく「心の測定」は、少なくとも二つの理由から擁護するのが難しいと考えています。一つは、これを測定と呼べるのかという点です。も