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傾聴を繰り返すカウンセリングに「歯がゆさ」を感じるカウンセラーさんへ。

書籍の序文をまるっと無料公開シリーズ vol. 4

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もっとクライエントの力になりたい。そんなあなたへ。

 カウンセリングで重要とされる「傾聴」。これがいかに大事であるか,カウンセラーの方には説明するまでもないと思います。
 しかし,傾聴を繰り返すカウンセリングに歯がゆさを感じることもあるのではないでしょうか。

たとえば…
 「もっとクライエントの力になれたら…」
 「だけど相手の抱える問題に踏み込むのは難しそうだ」
 「自分にできるだろうか…勇気がでない」
こんな思いをお持ちかもしれません。

 本書ではそんなカウンセラーさんに,一歩踏み込んだアプローチを提案し,問題解決に導く術を詳述していきます。

 そのアプローチとして本書では、認知行動療法(CBT)対人関係療法(IPT)を取り上げ、イチからやさしく説いていきます。
 序盤では各技法の特性や効能などを図表を交えながら解説し,その後リアルな事例を通して現実的な学びを得ます。5つの充実した事例は逐語録のほか,そのときカウンセラーがどう思いどう行動したかが記されており、深い学びを得ることができるでしょう。

 とても読みやすく,まるで著者がマンツーマンでやさしく教えてくれているような,そんな感覚で読み進められることでしょう。初学者はもちろん,さらに学びを深めたい人にも効果的な一冊です。
「認知行動療法、対人関係療法に興味があるけど難しそうだ」そう思っているカウンセラーさんに。そして「クライエントの力になりたい」と強く想うあなたに。ぜひお勧めです。

それでは、以下「はじめに」を公開です!

コメント 2019-12-12 141900

はじめに
――傾聴だけではカウンセリングにはなりません――

 突然ですが,あなたは「カウンセリングって何をするのですか?」と問われたらどう答えるでしょうか。もしかしたら「傾聴」が答えとして挙がるかもしれません。ただ,傾聴はカウンセリングの本質の半分に過ぎません。カウンセリングの原語である“Counsel”は「熟慮して助言をする,適切な行いを提案する」という意味なのです。

 実は1940年頃までの米国のカウンセリングは助言を中心にしたものでした。しかし,助言中心の方法論が必ずしも強く支持されていたわけではありませんでした。そこで,C. Rogers(1902-1987)は,精神分析の非正統派とされていたO. Rank(1884-1939)やS. Ferenczi(1873-1933)の考察を参照して傾聴中心のクライエント中心療法を提案しました(久能ら,1997)。

 傾聴は非常に効果的なカウンセリングの技法です。近年は傾聴(共感)が脳に作用して「心の痛み」を緩和する仕組みも明らかになっています(岡本,2009)。しかし,傾聴も万能の方法ではありません。例えば,お手洗いの場所を尋ねた隣人に,深くうなずきながら「あなたはお手洗いに行きたいと思っているのですね。」「私には,あなたのお手洗いへのお気持ちの強さが伝わってきました。」などと応えたとしたら,それは意味のあることでしょうか?

 恥ずかしながら,筆者はキャリアの初期には上記のように無意味な傾聴をしてしまいそうなカウンセラーでした。私の実感ですが,傾聴はクライエントが「自分で答えを見つけ出す力がある」場合にはとても有力な支援法だと思います。クライエントは困っているからカウンセリングに訪れるのですが,困惑は心の痛みを伴います。その時にカウンセラーに傾聴されると心の痛みが軽くなります。そして考える力を発揮することができるのです。私は,これが「母性的風土」の意義だと考えています。

 しかし,手立てがなくて途方に暮れているクライエントに傾聴を繰り返すのは,お手洗いの場所がわからない隣人に傾聴を重ねるようなものです。真に効果的なカウンセリングにはクライエントを正しい答えに導くための助言や提案も必要なのです

 では提案や助言の質を高めるいい方法は何でしょうか? 私は日本的な精神分析や深層心理学,そしてキャリアコンサルティングなど,多様なアプローチのトレーニングを受けました。そして,その中で認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:CBT)と対人関係療法(Inter Personal Therapy:IPT)にその答えの一端を見つけました。

 CBT とIPT の最大のメリットは,個人と環境の相互作用の最適化を支援できる点です。私はこのことを“上手なテキトー(適当:杉山・井上,2018)”に導く支援と呼んでいます。個人と周囲の環境,すなわち人間関係や組織との相互作用が最適化されれば,本人だけでなく周囲の人間関係や組織も活性化することでしょう。もっとも,「現在の人間関係や所属組織から距離を取る」というアドラー心理学的な最適解が導き出される場合もあります。ただ,お互いに悪影響を与え合うという不幸を積み重ねるよりは,より生産的な展開があることでしょう

 なお,私は組織の最適化を追求する社会心理学者でもあります(杉山,2015)。個人へのアプローチを通して組織も最適化される支援デザインを理想にしています。もちろん,全ての事例が理想的な展開をするわけではありませんが,この本では実例を交えながら個人と組織のwin-win の関係を目指すCBT とIPT の活用法をご紹介したいと思います。本書を読破したとき,あなたのカウンセリングスキルは50%以上向上していることでしょう。クライエントも組織も,そしてあなたも幸せになるために,どうぞ本書をお役立てください

杉山 崇

【文献】
久能 徹・末武 康弘・保坂 亨・諸富 祥彦(1997).ロジャーズを読む 岩崎学術出版社
岡本 泰昌(2009).うつ病の病態に関わる脳内基盤 性神経学雑誌,111(11),1330-1344.
杉山 崇(編著)(2015).入門! 産業社会心理学――仕事も人間関係もうまくいく心理マネジメントの秘訣―― 北樹出版
杉山 崇・井上 夏希(2018).Step 0 から始める認知行動療法 遠藤 裕乃・佐田久 真貴・中村 菜々子(編) その心理臨床,大丈夫?――心理臨床実践のポイント――(pp.172-184) 日本評論社

目次

第1章 個人と職場を活性化するCBTとIPT―生物・心理・社会モデル
第2章 CBTとIPTのコツ―職場での願望との上手な付き合い方
第3章 “心”を整える―CBTの上手な使い方
第4章 コミュニケーションを整える―IPTを用いたカウンセリング
第5章 事例の中でのCBTとIPT―効果的な使い方

著者について

杉山 崇(すぎやま・たかし)
1970年山口県下関市生まれ。学習院大学大学院博士後期課程満期退学(心理学修士),元日本学術振興会特別研究員。山梨英和大学准教授,法政大学大学院講師,神奈川大学教育支援センター副所長を経て,現在は神奈川大学人間科学部教授,心理相談センター所長,日本学術会議公認メンタルケア学術学会理事,公益社団法人日本心理学会代議員,日本認知療法・認知行動療法学会幹事ほか。臨床心理士,一級キャリアコンサルティング技能士。
著書として,『キャリア心理学ライフデザイン・ワークブック』(2018年,ナカニシヤ出版),『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』(2018年,主婦の友社),『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』(2016年,永岡書店),『記憶心理学と臨床心理学のコラボレーション』(2015年,北大路書房),など。
NHK「ニュースウォッチ11」,テレビ朝日「ハナタカ優越感」,TBS「公開大捜索」などマスコミでの心理学概説も多数。


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