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親子のコミュニケーションのためにできること(井澗知美:大正大学心理社会学部臨床心理学科 准教授)#子どもたちのためにこれからできること

イライラして小言を言ってしまったり、反抗的な態度にカッとなってしまったり、子育てはときにストレスがたまることもあります。とはいえ、親子で一緒に家の中にいる時間が増えている今、なるべくお互いに気持ちよく過ごしたいものです。円滑なコミュニケーションのためにできること、気をつけたいことを、大正大学の井澗知美先生に教えていただきました。

 新型コロナウイルスのパンデミックのために、新しい生活を強いられるようになって数か月が経ちました。子どもだけでなく、親だって疲れやストレスを感じるのは当然のこと! 子どもと円滑なコミュニケーションをするためには、まず、親自身のケアが大切です。
 本稿では、まず、ご自身(またはお子さん)のパンデミック疲労に気づきケアすること、次に、子どもにポジティブな言葉をかけること、そして、子どもと口論になったときの対応についてご紹介します。

新型コロナウイルスのように新種のウイルスが世界的に大流行することをパンデミックといいます。

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パンデミック疲労に気づき、ケアしよう

 パンデミックという状況で引き起こされる感情には、恐怖、不安、孤独、絶望といったものがあります。こういった感情が起こるのは、人間にとって“ふつう”のことです。では、これらから引き起こされるパンデミック疲労はどのようなサインとしてあらわれるのでしょうか。

①心の内側で感じる疲労感
 たとえば、どうしようもない感じ、悲しみ、心配、欲求不満、イライラするなどです。

②行動としての現れ
 たとえば、いつもより食べ過ぎる/または食欲が減る、いつもより寝すぎる/または眠れなくなる、ぼーっとして何かに集中するのが難しい、考えが次から次へと移り変わってコントロールできない、誰かと口論したり誰かにかみつきやすくなったりする、人と会いたくなくなるなどです。

 どうでしょうか? あてはまることがあれば、それはパンデミック疲労かもしれません。

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 今後どうなっていくのか見通しがもてない、不確かな状況に適応するのは難しいことですが、疲労感を減らすために、できることを考えてみましょう。次に、いくつかのステップをご紹介します。

①身体のケアをする
 仕事や家族のケアに追われていると、自分の身体のことは後回しになりがちです。まず身体をケアしましょう。十分な睡眠をとる、栄養をとる、運動をするなどです。そうすることでエネルギーが充電され、気分も安定します。そして、免疫システムも強化されます

②情報収集を制限する
 コロナ関連の最新情報を得ることはよいですが、気がついたらネットをずっと見ていたりしませんか? 情報過多になるとマイナスの感情が増え、消耗してしまいます。たまには、ネットやテレビをOFFにして情報を遮断する時間帯をつくるのもひとつです。気分がよくなったらまた情報を見るようにします。また、信用できる情報源を選ぶことも大切です。

③ストレスレベルを下げる
 あなたの心が落ち着くこと、楽しいと思える活動に集中することでストレスレベルを下げましょう。ネガティブな感情にとらわれない時間をつくる工夫です。料理を作る、瞑想をする、呼吸法を試す、軽い運動をする(ヨガや散歩、ジョギングなど)、読書をする、お笑い番組をみる、映画を見るなど。ソーシャルディスタンシングといって、他者とのつながりが制限されていますが、電話や手紙、オンラインで気の合う誰かと雑談をする時間もよいですね。

④自分自身の感情を受け入れる
 パンデミックという困難な状況ではいろいろな感情がわきおこってきます。それはふつうのことです。それを抑え込んだり無視したりせず、自分の内側に起こる感情に名前をつけて、そういう感情があることを引き受けましょう。大人だって、落ち込んだり、イライラしたりすることがあるんです。そのあとに、気分をよくしてくれる何かに気持ちやエネルギーを向け直してみましょう。しかし、ネガティブな感情に打ちのめされてどうしようもないときには、専門家に相談するのもひとつです。身体をケアするのと同じくらい自分の感情をケアすることは大切です

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子どもをほめる~ポジティブな言葉かけをしてみよう~

 一緒にいる時間が長くなると、子どものできていないことに目がいきがちになります。これもまた当然のことです。しかし、小言が多くなる→子どもも余裕がなくなり反抗的になる→問題行動が増える→小言が多くなる→反抗的になる……といった悪循環に陥ると、親も子もストレスが増します。

 先ほど述べたように、パンデミックは子どもにも影響を与えているかもしれません。いつもならできていることでも、ストレスがかかると、一時的にできなくなることがあります。まずは、「今できていること」に注目するようにしましょう。お子さんが今できていることで、好ましく思うことはなんでしょうか。それをみつけて、そのことをコメントしましょう。言葉にして伝えることが大切です! お子さんが「認められた(ほめられた)」と実感できるからです。大好きな人から認められることで、子どもは心が安定します。

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「うちの子は、いいところが全くない……」と嘆く親御さん、お子さんの行動をじっくりと観察してみてください。小さな成功はないでしょうか。たとえば、「着替えをほめる」だと、着替え始めてから着替え終わるまでの全プロセスが終わってからほめることになります。しかし、途中で止まってしまう、余計なことをしてしまうからほめられずに終わることもあります。そんなときは、着替えを細かく見ていきます。「お、靴下を片方はいたね」「シャツのボタン止められたね!」「そのシャツ似合うね」など、着替えにまつわる具体的な行動をピックアップして、そこをほめてみましょう。

 指示を細かく分けるのもひとつです。たとえば、食事の後片づけをしてほしいとき。食器を流しに下げる、食器を洗う、食器をふく、棚にしまうなどがあるとします。「片づけておいてね」だけだとできない場合は、「食器を流しに下げてね」と指示します。次に、「下げたお皿を洗ってね」と指示します。そんなふうに1回にひとつずつ、指示を出す方法もあります。お子さんの年齢や特性にあわせて、指示の工夫をしてみましょう(ほめ方の工夫、指示の工夫について、詳しくは参考図書をご覧になってください)。

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子どもとの口論にうまく対応する

 口論というのは、相手がいないとできないものです。つまり、言い争いを減らしたければ、離れる、見ないようにする、というのもひとつの方法です。とはいえ、一緒に過ごす時間が増えると、会話も増え、いろいろなことが目につき、口論になってしまうこともあるでしょう。

 さて、お子さんと口論になるきっかけはなんでしょうか? お子さんの年齢にもよると思いますが、主に2つあるでしょう、ひとつは親が子どもに注意や指示をしたときの口答え、もうひとつは雑談をしているなかでコミュニケーションがすれ違っていったとき

 ひとつ目の注意や指示に関しては、指示の工夫をすること、つまり口論にもっていかないということです。まずは、指示をシンプルにすること、わかりやすい指示をすることを心がけましょう。

 しかし、指示が伝わったとしても、従いたくないお子さんはいろいろと屁理屈を言ってくるでしょう。たとえば、「9時になったらベッドに入って電気を消しなさい」と言っても、「まだ眠くない」「〇〇をやってから」「明日の朝ちゃんと起きるから」「クラスのみんなは10時まで起きてるんだよ」等々。お子さんを説得しようとすると堂々めぐり、言葉の達者なお子さんはいくらでも屁理屈を思いつき、親はイライラさせられます。

 そういうときには「ブロークンレコード」が役立つかもしれません。「ベッドに入って電気を消しなさい」という指示をただシンプルに繰り返す方法です(壊れたレコードだとレコード針が引っかかって同じところを繰り返しますが、そのイメージです)。お子さんの屁理屈を引き出さず、指示を伝える方法です。

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 雑談をしているなかで、コミュニケ―ションがすれ違っていくこともありますね。たとえば、子どもが話しかけてきたからコメントしただけなのに、急に子どもが不機嫌になって怒り出すことがあるかもしれません。子どもの暴言に親もイライラし、雑談だったはずが口論になる……。そんなときは、次のステップに沿ってみるとうまくいくことがあります。

①気持ちを落ち着ける
 まず、冷静になりましょう。怒りを感じるかもしれませんが、すれ違ったコミュニケーションに対処するには親自身が気持ちを落ち着けることです。深呼吸をする、心の中で10数える、いったんその場を離れるなど工夫をします。

②子どもの話を聞く
 お子さんは何を言っているのでしょうか? こちらの言い分を伝える前に、まずお子さんの言っていることに耳を傾けてみましょう。心理学ではアクティブ・リスニング(積極的傾聴)といいます。お子さんが話したことを、内容だけでなくそのときの気持ちも含めて、共感的に聞く技法です。「~ということかな」「~と思ったみたいだね」というフレーズで、断定するのではなく、私にはこんなふうに受け取れたよと伝え返します。気持ちを受け取ってもらえるとお子さんは落ち着きます。

③親の気持ちや考えを伝える
 そのうえで、親の言いたかったことを穏やかな口調で伝えましょう。
「気持ちを落ち着ける→相手の話(感情も含めて)を聞く→自分の思いを伝える」、この3つのステップを意識してみましょう。少なくとも口論がヒートアップしていくのを防ぐことはできるでしょう。

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 いろいろと予期せぬ事態が起こり、親も子もストレスを感じるこのごろです。うまくいかないことがあっても当たり前、そんな自分を許す力を身につけましょう。そして、小さなことでもできている自分、頑張っている自分を認めていきましょう。

◆執筆者プロフィール

井澗知美(いたに・ともみ)
大正大学心理社会学部臨床心理学科准教授。専門は発達臨床心理学。幼児期早期から成人期に至るまでのライフスパンを通じた支援のあり方の研究と実践を行っている。

参考図書


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