見出し画像

あなたも、あなたの会社も、キャリアコンサルティングで元気になる方法を学び実現しましょう!

書籍の序文をまるっと無料公開シリーズ vol.1

画像1

◆セルフ・キャリアドックをご存知ですか?

 セルフ・キャリアドックという言葉を耳にしたことはありますか?
 セルフ・キャリアドックとは,定期的なキャリアコンサルティングとキャリア研修などを組合わせて従業員のキャリア形成を促進・支援する総合的な仕組みのことです。

 この仕組みは,厚生労働省が推進し,普及拡大加速化事業として力を入れている取り組みです(本書刊行時時点)。働き方,生き方が多様化するいま,従業員の活力を引き出すことで企業の成長へとつながる取り組みとして注目されています。

 本書ではこのセルフ・キャリアドックを導入からフォローアップまで,ゼロから具体的かつ丁寧に解説していきます。セルフ・キャリアドック導入推進事業の元メンバーによる渾身の本書で,あなたもあなたの会社も元気になる方法を学び実現しましょう!

それでは「まえがき」を公開です!

画像5

 本書のタイトルにある「セルフ・キャリアドック」とは,定期的なキャリアコンサルティングとキャリア研修などを組合せて,従業員のキャリア形成を促進・支援する総合的な仕組みのことです。本書は,企業内キャリアコンサルティングについて述べていますが,個別面談の技法を伝えるというよりも,「個を超えたキャリアコンサルティング」の考え方と技法を中心に紹介しています。「個を超えたキャリアコンサルティング」とは,個人と他者,個人と職場,さらには個人と組織との関係性にかかわるキャリアコンサルティングを指します。もちろん,個別面談が重要なことに変わりはありませんが,組織においてはより高い視座で組織内の様々な関係性を捉える必要があります。なぜなら,個人の問題は組織との相互作用によって発生・維持されるからです。それゆえ,個人のキャリア形成を支援するためには,個人と組織の両方にかかわる技法が不可欠となります。本書はこの点を中心に伝えていくことをねらいとしています。

画像3

 筆者らは,厚生労働省の「平成28年度~29年度セルフ・キャリアドック導入推進事業」において,慶応義塾大学名誉教授である花田光世先生を座長とする導入推進委員会のメンバーであり,この委員会においてセルフ・キャリアドック導入のガイドラインとなる『「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開』(平成29年11月発行)の作成にかかわりました。このガイドラインは,導入の基本的なプロセスや勘所を示すことができた点で大きな成果といえます。一方,初めてセルフ・キャリアドックを導入しようとする企業にとっては,具体的な手順が示されておらず,内容が十分だとはいえません。また,セルフ・キャリアドック制度導入の助成金(平成29年度をもって終了)を目当てに制度を導入し,キャリアコンサルタントが組織に対し何らのフィードバックをしないまま一過性の個別面談を実施している例を多く耳にしました。セルフ・キャリアドックの正しい理解と実施が普及されていないことを痛感しました

 そこで,企業内で活躍するキャリアコンサルタント,産業カウンセラーや,今後導入を検討している企業,あるいは既に導入済みでさらなる推進を図っている企業の担当者を対象に,ガイドラインよりも詳しく,かつ分かりやすい入門書の必要性を感じ,本書の出版に至った次第です。
 しかしながら,セルフ・キャリアドック(あるいは,企業内キャリアコンサルティング)についての理論や技法が十分に確立しているわけではありません。よって,既存の理論・技法に頼らざるを得ません。そこで,本書は,コミュニティ心理学システムズ・アプローチ,システム思考,対話型組織開発,産業・組織心理学,人材資源開発論,およびキャリアコンサルティング導入済み企業におけるノウハウなどをもとに,セルフ・キャリアドックの考え方や理論・技法を構成しました

画像2

 本書は,ガイドラインにおける5つの標準プロセスに沿って章を構成しています。各章は,基本的な考え方,手順,各手順の詳細,まとめを基本構成とし,必要に応じてガイドラインの解説や各種様式の例示,事例,コラムを掲載しています。次に,各章について説明します。
 第1章では,「セルフ・キャリアドックの概要」を解説します。セルフ・キャリアドックが必要となった時代変化(キャリア観のパラダイム・シフト)と,セルフ・キャリアドックが目指す姿,セルフ・キャリアドックのプロセス(STEP)を解説します。
 第2章では,セルフ・キャリアドックの中核となる「人材育成ビジョン・方針」の策定について解説します。特に,導入準備として重要な「組織を見立てる」ことから人材育成ビジョン・方針に至るまでについて,事例を用いて重点的に解説します。また,その後の経営者のコミットメントを得ること,社内に周知することについても解説します。
 第3章では,「セルフ・キャリアドック実施計画」の作成について解説します。経営理念にもとづいて,人材構成の現状と将来像とのギャップを見定めて人材育成計画を立案する方法を解説します。また,キャリア研修,キャリアコンサルティング面談の実施に向けての準備についても解説します。
 第4章は,実施計画の作成とほぼ並行して実施する「企業内インフラの整備」について解説します。物理的な有形インフラだけでなく,無形インフラも含めて必要なインフラのチェックの観点を示します。また,インフラとして重要なセルフ・キャリアドックの実施組織とその人員,連携体制,社内規定(特に守秘義務と情報共有),意識醸成などについて解説します。
 第5章は,「セルフ・キャリアドックの実施1」として,「キャリア研修」について解説します。企業内における標準的なキャリア形成を踏まえて,年代別に必要なキャリア研修のテーマや,研修の運営方法を解説し,研修プログラムの例や研修事例を紹介します。
 第6章は,「セルフ・キャリアドックの実施2」として,「キャリアコンサルティング面談」について解説します。特に,非自発的来談を前提とした開発的な面談として,キャリア形成プロセスを点検してその課題を明確にしていく方法を中心に解説します。
 第7章は,各種施策の実施後の「フォローアップ」について解説します。各種支援施策を終了後に実施する個々の対象従業員へのフォローアップと,全体報告書をまとめて組織にフィードバックをして改善措置につなげることについて解説します。
 最後に,付録として厚生労働省が2017年に発行した『「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開』,厚生労働省が開設している「セルフ・キャリアドック普及拡大加速化支援サイト」,セルフ・キャリアドックに役立つ「学習の場」「推薦図書」「引用・参考文献」を採録しました。
 なお,各章の内容は他章と重複する部分がありますが,異なる視点からの記述になっていたり,補完し合っていたりしますので,この点ご容赦いただくと同時に,適宜,両方を参照していただきたいと思います。

 本書では,ガイドラインに沿った用語を用いています。この内,特有なものについてここで解説しておきます。

・人材育成ビジョン・方針:当該企業において求める人材像や人材育成の方針を示したもの。
・実施組織:セルフ・キャリアドックを実施・推進する組織。この組織のメンバーはキャリアコンサルタントであることが前提。
・実施責任者:実施組織の長であり,セルフ・キャリアドックの実施・推進を進める責任者。
・対象従業員:セルフ・キャリアドックにおいて支援対象となる従業員。
・現場管理職:対象従業員の上司である管理職(ライン・マネジャ)。
・キャリアコンサルティング面談:キャリアコンサルタントが,キャリア理論等の専門的な知見にもとづき,従業員の心理的な自己洞察を促して,キャリア形成について認識を深め,明確化するための面談のこと。上司が行うキャリア面談と区別している。
・キャリアコンサルティング面談シート,または面談(記録準備)シート:対象従業員が自身のキャリアに関する情報を記入するシート。キャリアコンサルティング面談において,キャリアコンサルタントと本シートを共有しながら面談を進める。なお,ジョブ・カードで代用してもよい。
・個別報告書:キャリアコンサルティング面談の相談者に関する内容をキャリアコンサルタントが記録するカルテのこと。
・全体報告書:当該年度におけるセルフ・キャリアドックの実施計画,実施結果,人材開発についての考察,今後の課題,組織的な改善措置などを書いた報告書。

 本書が,セルフ・キャリアドックの導入および運営に携わる方々の一助となることを願っています。
 本書は,セルフ・キャリアドック導入支援事業ならびにセルフ・キャリアドック普及拡大加速化事業に参画したことを契機に出版することができました。本事業の事務局,委員,協力企業担当者の皆様に感謝申し上げます。また,セルフ・キャリアドック普及拡大加速化事業のスーパーバイザーでいらっしゃいますキャリア心理学研究所代表の宮城まり子先生からは本書に推薦文を賜りました。誠に有難く,御礼を申し上げます。そして,本書の出版にあたってご尽力いただきました金子書房の皆様,特に編集担当の木澤英紀様に深謝いたします。

平成31年6月吉日
ユースキャリア研究所 
高橋 浩

【目次】

第1章 セルフ・キャリアドックの概要
第2章 人材育成ビジョン・方針の明確化―組織を見立てることの重要性―
第3章 セルフ・キャリアドッグ実施計画の策定―実施の準備と報告書の作成―
第4章 企業内インフラの整備―インフラの5分類と有形・無形インフラ―
第5章 セルフ・キャリアドックの実施1―キャリア研修の企画・立案・運営と研修プログラム―
第6章 セルフ・キャリアドックの実施2―キャリアコンサルティング面談における点検(見立て)と対応―
第7章 フォローアップ―セルフ・キャリアドックを徹底するために―

著者について

【高橋 浩】
ユースキャリア研究所代表、日本キャリア開発協会理事、法政大学および目白大学講師。博士(心理学)、公認心理師。国家資格キャリアコンサルタント。1987年、弘前大学教育学部を卒業後、日本電気アイシーマイコンシステム株式会社に入社し半導体設計、経営企画、キャリア相談に従事。2001年、CDA(キャリア・デベロップメント・アドバイザー)を取得し、2012年、キャリアカウンセラーとして独立。

【増井 一】
一般社団法人キャリアコンサルティング振興協会常務理事。
宇都宮大学キャリア教育・就職支援センター非常勤講師。
2級キャリア・コンサルティング技能士。1級ファイナンシャルプランニング技能士(資産設計提案業務)。シニアライフ・相談アドバイザー。
製薬会社においてMR・総務・人事に携わりながら、社内のキャリア相談員としてキャリアおよびファイナンシャル相談に長年従事。
多くのキャリア・ファイナンシャルの相談や研修講師としての経験から現場で必要とされる知識やノウハウを多く有する。




みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!