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メンタルヘルス対策としての運動の必要性~COVID-19下、運動不足解消への豆知識~(種市摂子:合同会社Ridente産業医事務所 精神科専門医)

日頃から気になる運動不足。外出自粛や在宅勤務でより運動不足の方もいらっしゃるかもしれません。今回は産業医の種市先生に、運動とメンタルヘルスの関係、そして継続のコツについてお教えいただきます。

 テレワークで運動不足の方が増えていますが、皆さんは、何か運動されているでしょうか?

 近年、抑うつと運動との関連が数多く報告され、運動による抑うつの予防や改善効果は強固なものとなっています。一方、運動とともに体力が向上することも知られており、近年では、抑うつと体力との関連も報告されています1)。一般的には、体力とは、長時間身体を動かすことのできる能力のことです。ホリエモンさんが、“メンタル不調防止には、体力があることが大事”というような話をされていましたが、本当にその通りです。経営者や芸能人等で、トライアスロンをされている人も多いようですね。これまでの様々な研究から、体力のある人は、抑うつのリスクが低くなることの他、心血管系疾患の罹患率や死亡率が低いこと等も、明らかにされています2)。

種市先生運動と抑うつ写真

 図は、主観的な健康観(自分自身の健康状態の主観的評価:自分を健康と思っているかどうか)と体力と運動量の関係を示した図です3)。主観的な健康観が良好な人(とても健康!と思う人)は、当然ながら抑うつ傾向は低くなり、逆に、主観的な健康観が不良の人(全く健康でない、と思う人)は、抑うつ傾向は高くなります。この図で、最も主観的健康観が高い人は、運動習慣があり、かつ体力がある人です。(運動量が少なくても、体力がある人もいるものの、全体でみると、中等度から強度の運動をする人で、主観的健康観が良好という結果です。)

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 *一般に、心肺持久力とは、体力のことです。オッズ比とは、見込み(起こりやすさ)のことで、この図では、数値が高いほど、抑うつ傾向が低いことになります。
 *図の日本語表記は筆者作成。

 さらに、ちょっと専門的になりますが、体力と抑うつとの関係についてのメタアナリシスでも、体力がある人では、抑うつ傾向が低いことも明らかにされています4)。(メタアナリシスとは、過去に独立して行われた複数の臨床研究のデータを収集・統合し、統計解析したもので、多くの研究結果を総合的に評価する方法です。)他に、抑うつだけでなく、体力がある人では、不安が少ないことも報告されています。

 以上のような結果から、“体力を高める運動が、メンタルヘルス対策にはお薦め”ということになるのですが、では、具体的にどのような運動が良いのでしょうか?

 体力を高めるには、ジョギング、水泳、サイクリングのような“全身を使う運動”が適しています。これらの運動をおこなうと、酸素の摂取とともに呼吸・循環器系が活発に活動し、強化されます。体力を向上させると、毛細血管が発達し、血液量の増加に比例して運搬される酸素も多くなるため、有酸素運動に必要な酸素を長時間供給出来るようになるわけです。筋トレでも、“全身を使う”ことです。

種市先生運動写真

 では、どのくらい行うと良いのでしょうか?

 運動習慣の殆どない人にとっては、“何もしないよりは、少しでも良いので体を動かすこと”です。一方、運動習慣がある人は、運動強度を上げることです。隙間時間を活用すれば、効率的に時間を使うことが出来るでしょう。「運動量=強度☓時間」です。ちょっときつめの運動を、短時間、一日複数回行うと良いでしょう。要は“継続できること“が大事です。さらに、やればやるほど良いかというとそうでもなく、激しい運動を長時間行うと、今度は、ケガや病気のリスクも上がります。トライアスロンでも、事故が起きていますね。無理なく継続できることが大事です。

種市先生継続写真

 では、継続するには、どうすれば良いでしょうか?

 それは、“続けやすい環境”を作ることです。例えば、知人に声かけして朝のルーティーンにして、オンラインでのエクササイズの時間をつくる(朝の切り替えにもなりますね)、お金を払ってオンラインでのエクササイズのサービスを利用する、(出来れば身近に)ロールモデルになる人を見つける等です。運動習慣がない人にとっては、一人で頑張るよりは、仲間やサポーター、ロールモデルになるような人がいる方が続けやすいでしょう。私は、以前は、インストラクターの方がいるので、ヨガに通っていましたが、昨年から水泳に切り替え、運動習慣として定着しています。加えて、座りっぱなしにならないよう、隙間時間のこまめな運動も心がけています。

 その人の生活環境や体力レベルに合った運動習慣を作り、体力をつけていきましょう!私は、運動習慣で、大分体力はついてきました!

参考文献
1) Dishman Rodney K, Sui X, Church TS, et al . Decline in cardiorespiratory fitness and odds of incident depression. Am J Prev Med 2012 ;43:361-368.
2) Schmid D, Leitzmann MF. Cardiorespiratory fitness as predictor of cancer mortality: a systematic review and meta-analysis. Ann Oncol 2015 ;26:272-278.
3)Eriksen L, Curtis T, Gronbaek M, et al . The association between physical activity, cardiorespiratory fitness and self-rated health. Prev Med 2013 ;57:900-902.
4)Papasavvas T, Bonow RO, Alhashemi M, et al . Depression Symptom Severity and Cardiorespiratory Fitness in Healthy and Depressed Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med 2016 ;46:219-230.

執筆者プロフィール

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種市摂子(たねいち・せつこ)
合同会社Ridente産業医事務所 代表、東京大学大学院教育学研究科 特任助教、たわらクリニック東京心療内科・神経科 医師。日本医師会認定産業医。日本精神神経学会精神保健に関する委員会委員。遠隔産業医衛生研究会世話人。
産業医として多くのIT企業、ベンチャー企業を支援、ヘルスケア事業のコンサルティング経験も豊富。精神科一般を専門とするが、なかでも不安症、パニック症、睡眠障害、ADHD、大人の発達障害に関する多くの診療・支援実績がある。
著書として、『うつのためのマインドフルネス&アクセプタンス・ワークブック』(翻訳・星和書店・2018年)、『その不調、「隠れうつ」かも』(監修・マキノ出版・2020年)がある。

▼ 著書


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