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特別支援教育・教育相談の枠にとらわれない、多面的な理解と支援を“ズバッと”学べる1冊。

書籍の序文をまるっと無料公開シリーズ vol. 5


「障害・問題行動」だけではなく「その子自身」に目を向ける。

今回ご紹介する『ズバッと解決ファイル』は金子書房が刊行する特別支援教育関連図書の中でも随一のベストセラー。見る者の目に「ズバッと!」飛び込んでくるインパクトある真っ赤な表紙と、中を開くとさらにインパクトのある充実した事例や解説が特徴の1冊です。刊行は2009年ですが、今なおその内容は色あせることはありません。それはひとえに、本書が通常学級の「気になる子」たちの「障害」や「問題行動」だけを見るのではなく、その子自身の在り様や、問題行動の陰に隠れた「いいところ」や「持ち味」にも目が向けてまとめられているからだと思います。

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『ズバッと解決ファイル』のポイントは以下の5つです。

■本書の「5つ」のポイント

1.厳選した12ケースから「多面的な視点からの子ども理解」と「具体的かつ、なるべく取り組みやすい関わり」のためのアセスメントとアプローチの方法を紹介しています。

2.各ケースには支援のエキスパートであるゲスト執筆者が「支援の達人」として登場します(総勢15名)。「支援の達人」の先生方の専門は、応用行動分析(ABA)、行動療法、感覚統合、神経行動科学など…。編著者の阿部先生とは、また違った視点の「支援のアイデア」を披露します。

3.さらに、専門性を高めたい人のために、「教えて達人!」コーナーで、支援の達人たちが自身の専門分野について、基礎的なことから丁寧に徹底解説しています。

4.各ケースの最後には、編者の阿部先生による支援のエッセンスを簡潔ににまとめた「ズバッとカード」を掲載されており、読者の理解を助けます。

5.各ケースの合間には、読者が日々の中で行うことのできるちょっとしたトレーニングを紹介するコラム「ちょいトレ」も掲載しています。


また、本書で紹介するケースファイルは、以下の「12ケース」となります。

№1 すぐあきらめてしまう子
№2 パニックになりやすい子
№3 「うそ」をつく子
№4 落ち着きがない子
№5 乱暴な子
№6 勝ち負けにこだわる子
№7 おしゃべりがとまらない子
№8 字を書くのが嫌いな子
№9 失敗を恐れる子
№10 場の空気が読めない子
№11 片づけられない子
№12 影でコントロールする子

教壇に立つ先生方、療育や発達支援の現場の支援者の方々、また発達障害のある子を育てている保護者の方々が読んで「あ、この子は…」と、子どもの姿を具体的にイメージできるケースが豊富に紹介されています。

※ちなみに、ケースに出てくる子どもの名前にも「特徴」があります。タケシ君、ハヤト君、ユリコさん、シロウ君、タチバナ先生……まあ、これは分かる人だけ分かっていただければ、と(笑)

なお、本書をきかっけに、各地で阿部先生と「支援の達人」の先生方による講演会「ズバッと解決LIVE」が開催され、さらに連載ブログ「電脳・ズバッと解決ファイル」なども企画されました(現在は連載修了)。そして『ズバッと』のエキスパート編として企画された、『ズバッと解決ファイル NEXT LEVEL』、阿部先生と11人の「支援の達人」とが、発達障害、特別支援教育、教育のユニバーサルデザイン等々について対談する『ズバッと解決ファイル V3』という続編も生まれました。これらの書籍については、改めてご紹介したいと思います。


それでは、以下「はじめに」を公開です!

はじめに──子ども“の”応援団・子ども“が”応援団

今日では、学校で子どもたちが直面する問題も多様化・複雑化してきており、教育相談、生徒指導(生活指導)、特別支援教育、といったそれぞれの枠組を越えた柔軟な手立てが求められるようになってきています。
そんな学校現場で、苦しみ悩む子どもたちのために日々全力で取り組んでおられる、多くの先生方や保護者の皆さんに出会うたび私が感じること、それは、多忙ゆえに皆さんが「疲れきっている」ということです。子どもたちとの毎日の関わりで手一杯、あまっさえ、新しいことを学んでその手法を取り入れよと言われてもそんな暇はない、そこまで余裕がない、という悲鳴にも似た声が聞こえてきます。そうですよね、心身が疲れていたら、専門用語や技法を学び咀(そ)嚼(しゃく)して自分のものにするなんて、とてもできることではありませんよね。

そこで、本書では、通常学級にいるさまざまな困難や支援ニーズを持つ子どもを応援する方法について、多面的な視点を持たせながらも、具体的、実践的で、なるべく取り組みやすい方法をご提案していくことを何より大切にしました。また、章ごとに、子どもを応援する「達人」にご登場いただき、阿部とは別な視点からのさまざまな支援のアイデアをご紹介いただいています。ご協力いただいた「達人」は、それぞれ学校臨床心理学、行動療法、応用行動分析、感覚統合などについての高い専門性を身近な取り組みにつなげ、素敵な実践をされておられる先生ばかりです。私がリスペクトし、常に刺激を受け、そして子どもへのあたたかいまなざしを共有できる「達人」に集結していただき、執筆陣は実にぜいたくなラインナップとなりました。
さらに単行本化にあたり、「児童心理」連載時には誌面の関係でお伝えしきれなかった部分について「達人」の皆さんに大幅な加筆をいただきました。そして、連載時にはお目見えしなかった「新・達人」にもご登場いただいて、さらなるパワーアップを果たしました。連載時に応援してくださった読者の皆さんにも、たくさんの新しい発見をお届けできることでしょう。「達人」たちの惜しみないご協力のおかげで、多くの方のニーズに応えられる、バラエティ豊かでさまざまな示唆に満ちた一冊になったと自負しています。
本書は章ごとに独立していますので、目の前で困っているお子さんの状態に近いケースの章から読んでいただいても、あるいは、興味をお持ちのテーマから読み進めていっていただいても構いません。「達人登場!」コーナーまでは、なるべくわかりやすく、すぐにでも実践していただけるような展開をお願いしました。「達人」の皆さんは私のわがままなお願いに全力で応えてくださり、それぞれの個性あふれる素晴らしい支援をご披露くださっています。そして、最後の「ズバッとカード」では、章ごとのエッセンスをまとめてみました。お忙しい方は、ここを読んでいただくだけで、十分実践に役立つ知識を得ることができます。
それに加え、各章の終わりに、さらに専門的に踏み込んだ「教えて達人!」コーナーをご用意いたしました。もっと知識を深めたい方は、どうぞお役立ていただきたいと思います。
また、「ちょいトレ」というコラムでは、面接や相談を行う際のテクニックをご紹介しています。これは、私がこれまでの実践の中で悩んだとき、つまずいたときに、「達人」や先輩から伝授していただいた技です。難しくはありませんので、よろしければこの「ちょいトレ」をちょっと意識しながら面接や相談を行ってみてください。今までと違う視点や関わりが見えてくるきっかけになってくれれば幸いです。

さあ、本書でぜひ私たちとともに、支援のスピリットとテクニックを学んでください。
そして、子どもたちみんなが本来持っている、その子なりの「輝き」を引き出すべく、子どもたちを応援していきましょう。こうして子どもたちが輝き始めたそのとき、今度は子どもたちが私たち大人の「応援団」となってくれて、きっと私たちにたくさんの心のエネルギーを与えてくれるに違いありません。

阿部 利彦



目次

ファイルNo.1 すぐあきらめてしまう子 阿部利彦×菅野 純
☆教えて達人!「支援者としての心得(その1)」

ファイルNo.2 パニックになりやすい子 阿部利彦×原口英之×小貫 悟
☆教えて達人!「子どもの社会性を育むには」

ファイルNo.3 「うそ」をつく子 阿部利彦×嶋田洋徳
☆教えて達人!「教育相談に生かす行動療法」

ファイルNo.4 落ち着きがない子 阿部利彦×大石幸二

ファイルNo.5 乱暴な子 阿部利彦×今井正司
☆教えて達人!「乱暴な行動への理解と対応:衝動的攻撃行動をコントロールする注意機能」

ファイルNo.6 勝ち負けにこだわる子 阿部利彦×坂本條樹
☆教えて達人!「気持ちの切り替えを支援する」

ファイルNo.7 おしゃべりがとまらない子 阿部利彦×加藤陽子×菊島勝也

ファイルNo.8 字を書くのが嫌いな子 阿部利彦×川上康則
☆教えて達人!「感覚統合の視点を応用して不器用な子の支援を考える」

ファイルNo.9 失敗を恐れる子 阿部利彦×美和健太郎
☆教えて達人!「不安階層表の活用方法:不登校支援ケースを通して」

ファイルNo.10 場の空気が読めない子 阿部利彦×藤野 博
☆教えて達人!「心の理論」

ファイルNo.11 片づけられない子 阿部利彦×中村智成×黒川君江

ファイルNo.12 「影」でコントロールする子 阿部利彦×角張憲正
☆教えて達人!「支援者としての心得(その2)」

【COLUMN】ちょいトレ:子どもや保護者に寄り添える支援者を目指して
 1 服の印象を相手に合わせる
 2 場面や相手に表情を合わせる
 3 相手に姿勢を合わせる
 4 声のトーンを合わせる
 5 呼称を合わせる
 6 体内時計を鍛える
 7 面接に「沈黙」を取り入れる
 8 面接のペースを考える
 9 大切な話題に触れる場所を考える
 10 テーマを掘り起こし過ぎない
 11 即答しない勇気をもつ
 12 〈出会いの達人〉たれ!

編著者プロフィール

阿部利彦(あべ・としひこ)
星槎大学大学院教育実践研究科教授。1968年生まれ。早稲田大学人間科学部卒業,東京国際大学大学院社会学研究科修了。専門は教育相談,学校コンサルテーション。東京障害者職業センター生活支援パートナー(現・ジョブコーチ),東京都足立区教育研究所教育相談員,埼玉県所沢市教育委員会健やか輝き支援室支援委員などを経て,星槎大学大学院教育実践研究科准教授。星槎大学附属発達支援臨床センター長。日本授業UD学会理事。日本授業UD学会湘南支部顧問。主な著書に、『これだけは知っておきたい 発達が気になる児童生徒の理解と指導・支援』(共著,金子書房,2019)、『人的環境のユニバーサルデザイン』(共著,東洋館出版,2019』、『決定版! 授業のユニバーサルデザインと合理的配慮』(編著,金子書房,2017),『クラスで気になる子の支援 ズバッと解決ファイルV3 対談編』(編著,金子書房,2017),『通常学級のユニバーサルデザイン スタートダッシュ Q&A 55』(編著,東洋館出版,2017)『見方を変えればうまくいく! 発達が気になる子の子育てリフレーミング』(編著,中央法規出版,2015),『通常学級のユニバーサルデザイン プランZero2 授業編』(編著,東洋館出版社,2015)など多数。


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