新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
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新型コロナウイルスが子どもや家庭に与える影響と対策(大原天青:国立武蔵野学院・厚生労働技官)#つながれない社会のなかでこころのつながりを

ソーシャルワークや福祉心理学、非行臨床をご専門とされる大原先生。豊富な実践経験から、この自粛期間を有意義にするヒント、そして親子関係のヒントをいただきました。ぜひご一読いただき、この状況を前向きに乗り切りましょう。

1.新型コロナウイルスが子どもや家庭に与える影響

 新型コロナウイルスによる感染症は2019年11月に中国湖北省武漢市で確認されて以降、全世界に広がっていきました。当初はニュースで取り上げられても、他国の悲惨な状況に対して、SARSの流行と同様に日本には感染症が広がることもなく安全であろうと思い込んできました。ところが世界保健機関によって「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であるとの宣言が出され、日本でも感染者数が日を追うごとに増えています。そしてついに緊急事態宣言が出されました。

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不安の増加
 こうしたニュースを毎日のように目や耳にすると、「自分は果たして感染していないか」とやや不安になることもありますよね。今や感染経路が不明である感染者数も増加していることから、仕事柄外出せざるを得ない方や基礎疾患のある方など一定の不安を抱き、入念な対策をすることは重要でもあり、適切であると言えます。しかしながら、こうした感染症のニュースは元々不安感を抱きやすく、その感情を日常生活から切り離しにくい方にとってはさらに厳しい環境でもあります。
 実際、相談機関には新型コロナウイルスに関連した不安感を主訴に電話での相談が寄せられることもあります。「もう死ぬのではないか」「自分が亡くなった場合に子どもに託してほしいことがある」「不安で夜も眠れない」など、新型コロナウイルスの広がりとともに、心理面でもバランスをとることが難しくなる方もおられるのです。

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仕事への影響
 2020年は日本にとっては東京オリンピック・パラリンピックを1964年に開催以降2回目となる記念すべき年になるはずでした。建設関連企業や飲食店、観光業をはじめ多くの経済効果を生むはずでした。ところが、そのオリンピック・パラリンピックも延期され、飲食店をはじめ娯楽施設を含めて時短営業や休業を余儀なくされている現状にあります。
 私は仕事柄、毎日電車で都内に向かわなければならず、飲食店が立ち並ぶ通りを時間に追われながら歩く日々があります。以前は明るく賑やかだった通りも今では薄暗く、閑散とした雰囲気になっており寂しさを感じています。
 この事象は様々な当事者にとっては、死活問題となっています。先日いつもの通りを急ぎ足で歩いていると、大きな声で携帯電話の相手に怒りをぶつける男性がいました。その電話の内容は、「仕事ができずにお金がない、どうにかしてくれ」という必死の訴えでした。
 こうした状況は子どもたちに影響を及ぼすことは明らかです。特に定期収入ではない職に就いておられる方にとっては、世帯収入の減少は食費、学費、日常の生活費を圧迫していきます。貧困が子どもたちに与える影響は、心理、身体、対人関係、学力面など多方面に及んでいきます。具体的には、貧しいという劣等感、他児と同様の交友機会に参加できないこと、塾などの学習機会の減少、両親が仕事に追われ子どもに割ける時間の減少などもあります。

学校休校
 小学校から高校までは休校、多くの大学も1学期はオンライン授業による対応を行い、対人接触・3密をさける対策が取られています。子どもたちにとって、学校は学習面だけではなく、同学年の集団の中で協同して物事に取り組む体験、スキルを身に着け、自分らしさを発見し、将来に向けた自分を作っていく重要な場になっています。特にクラブ・部活動などは、その年齢・学年・メンバーでしか体験できないことが学べる、一生に一度の重要な機会でもあります。そうした機会が新型コロナウイルスの影響によって奪われてしまうことは、発達上の大きな弊害になると思われます。
 また幼少期の子どもをもつ家庭では、学校の休校が保護者の仕事にも影響を及ぼすことになり、新型コロナウイルスによる負の連鎖が起こります。
 一方で学校に行きたい気持ちがあっても行けない、もしくは学校への恐怖などが強く登校できない子どもたちにとっては、正式に学校が休校になるこの時期は少しホッとする機会になっています。いつも学校に行かなければいけないプレッシャーに押しつぶされそうな気持から解放されているのではないでしょうか。

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家庭における3密
 社会では「密閉」「密集」「密接」という3密を避けるようにアナウンスがなされており、自宅で過ごすように、東京ではゴールデンウイークも「Stay Home 週間」として位置づけられていました。
 一方で家庭では、親子関係における3密が問題になっています。これまで自宅で家族が長時間にわたり過ごすことは、各自の生活スタイルから考えれば幼少期を除いてあまり多くはなかったと思われます。子どもは学校、部活、アルバイト、習い事などで多忙ですし、保護者は仕事で家を離れ、また家事に追われる日々を過ごすことが多かったのではないでしょうか。
 子どもは発達段階から考えても、年齢が上るにつれて保護者から物理的にも心理的にも距離をとり成長していきます。しかし新型コロナウイルスの影響により、みな自宅にいることを求められる環境は、発達段階と不適合を及ぼす環境になると思われます。そのために、家庭内では親子間にまつわる様々な葛藤が生まれることも想像できます。
 児童相談所の虐待相談は、新型コロナウイルスの影響で学校や関係機関が閉鎖されている状況もあり、激減していますが、実は見えない、通告されない問題が潜んでいるのではないかと心配しています。

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2.子どもと家族の関係性に働きかけるヒント

 新型コロナウイルスによる様々な影響について思いつくままに挙げてみました。ここでは自宅での自粛生活を有意義に過ごすためのヒント、子どもと家族の関係性に変化を与える視点について紹介します。

自粛生活という見方を変える
 新型コロナウイルスによる影響は、個人の心理面から、教育、産業、経済などの社会全体に及んでいます。そして様々な活動が自粛という形で制限されている現状があります。そのため予定していた活動をキャンセルせざるを得ない状況も発生しストレスを抱えている人も多いこととでしょう。しかし、自粛生活だからこそできることを考えてみると、その過ごし方の意味付けが変わってくるかもしれません!

過ごし方のヒント
 自宅で過ごす時間の多い方にとってはあまり普段と変わらない日常かもしれませんが、外出することを好む方にとってはかなり苦痛を強いられる期間でしょう。特に活発に活動する小中高生にとっては。
 そこで自分だけで楽しめることを増やすのも過ごし方の1つの方法ではないでしょうか。様々なジャンルの読書や料理、瞑想、筋肉トレーニング、音楽、映画など、自宅で一人でもできることはたくさんあります。このように何気ない日常を過ごすことで充実感を得られる人もいれば、目標としてきたことが中断させられることにもどかしさを感じる人もいるかもしれません。
 目標としてきた部活や学業が中断していること、取り組むはずだったことができない葛藤を抱えている方もいるでしょう。そんな方には、「今別のことに懸命に取り組むことは、無駄なことではなく、将来的につながることになる!」と、思考を変えることをお勧めします。

新たなことに挑戦する
 そして、これまで取り組みたくてもできなかったこと、挑戦したことのないことに挑戦する機会にしていきましょう!

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親子関係の媒介となるもの
 自宅で過ごす時間が長いことで親子間の問題が生じやすくなることは先ほど説明しました。そんなときに、親と子どもの間にモノを媒介させることで関係性に変化が生まれることがあります。
 例えば、ペットです。すでに飼われている方は、「そうそう!」と納得される方もいるのではないでしょうか。猫や犬など家庭内で飼われる小動物は、二者関係の間を取り持つ重要な存在となることがあります。またそれはペットだけではなく、料理やカードゲーム、テレビゲームなどでもよいかもしれません。直接対話をしたり、向き合うことはややエネルギーを必要とするかもしれませんが、モノが媒介になるだけで関係性は変わるかもしれません!

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楽しいことを計画する
 自宅にいてもインターネット環境があれば、様々な情報が手に入ります。そこで自粛生活が解除された際に取り組むことの計画を立てることはできますよね。スポーツ、好きな飲食店、インテリア、雑貨、アパレル、アウトドア、観光、旅行などなど、趣味に関する情報を収集し楽しむこともできます。

3.社会への働きかけ

 さて、新型コロナウイルスによる影響は子どもと家族の関係性に影響を与えるだけではありません。社会のシステムにも大きな影響を与えています。経済面の影響は会社やそこで働く従業員の生活に影響を与え、それは家庭、子どもにも及んできます。ある家庭で起きる困難な出来事は決して対岸の火事ではなく、いつでも自らに降りかかってくることでもあると言えます。
 困難を抱える子どもや家族を支えるのは一人ひとりの小さな心がけであり、そのような地域をつくるのも個人であります。他者とともに、支えあう地域や社会を形成していくためにできることを、小さなことからはじめていきましょう。

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(執筆者プロフィール)

大原 天青(おおはらたかはる)
国立武蔵野学院・厚生労働技官。
専門は福祉心理学・ソーシャルワーク。著書として『感情や行動がコントロールできない子どもの理解と支援:児童自立支援施設の実践モデル』(2019年/金子書房)。
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「こころの健康」のための情報発信や、心理検査を開発・販売しています。 そのほか、中の人が色々書いたりします😊

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