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【ケース3まとめ!】ズバッと解決ファイル4U ~登場人物の気持ちを理解することが難しい子~(阿部利彦:星槎大学大学院教育実践研究科教授)

ケース3では、「登場人物の気持ちを理解することが難しい子」の事例を取り扱いました。本記事では、阿部先生に再度ご登場いただき、達人としてご登場いただいた前田先生、片岡先生の記事を振り返りつつ、まとめていただきます!本連載についてもまとめていただきました。
それでは以下より本編スタートです!

 物語文の読み取りが苦手な子への支援はいかがだったでしょうか?ちなみに、私もこの春に金子書房のnoteで国語の支援をテーマにした記事を書いていますので、そちらも参考にしてみてください。

 さて、前田先生の個別支援案、片岡先生の通常学級での支援案、双方を学んでみると、お二人の考え方には共通した点があることにお気づきになることと思います。

 例えば問い方の課題について着目してみましょう。前田先生は「どんな気持ちでしょうか?と問われると、考える要素が多すぎて思考が止まってしまいます」と、片岡先生は「なぜ?やどんなことを?などの発問は難しく、考えづらい」とおっしゃっています。このような「オープンな問い」に答えることが苦手なお子さんは実際多く見受けられます。

 しかしながら、「オープンな問いに答えることが苦手な子」や「登場人物の気持ちを考えることが苦手な子」が多くいる、という理解が、学校現場に十分広がっているとは言えません。だからこそ、私たちは様々な子どものつまずき方や間違い方を把握し、そこから学んでいかなくてはならないのです。

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 今回で、このnote連載は完結です。私がこの連載で、達人の先生方の力と技をお借りして読者の皆様にお伝えしたかったことは、「学びにつまずきのある子の学びを止めてしまってはいけない」ということです。

 特に発達障害のあるお子さんについては、時々「勉強はいいからお友達と仲良くできるようにさせたい」あるいは「勉強はできなくてもいいので、落ち着いて過ごせるようにしたい」とおっしゃる大人がいます。その気持ちもわからなくはないのですが、「勉強はいいから」「勉強はできなくても」という言葉には「ちょっと待って」と言いたくなってしまいます。

 たしかに一般的な教え方では理解が難しい子が多いわけですが、その子一人ひとりにあった教え方を検討し、オーダーメイドの学習支援を工夫することで、着実な伸びが期待できる場合がたくさんあるのです。

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 それでは、その子にあった教え方を探るにはどうしたらよいでしょうか?そのヒントは片岡先生がおっしゃっている「理解のズレ」にあります。これは国語、物語文に限ったことではありません。

 子どもたちの各教科・各単元・各課題における「理解のズレ」や「間違い方」には、その子の学び方の癖や苦手さが表れています。支援者に必要とされているのは、このズレや間違い方を丁寧に読み取り、その子にあった説明の仕方、ポイントの伝え方、問い方、ヒントの出し方などを検討していくことなのです。

 心理職の方々からすると、「勉強を教えることは守備範囲ではない」と思われる方も多いでしょう。学校の先生に任せるべきだ、そう思われるかも知れません。私も駆け出しの頃はそう考えていました。

 しかしながら、現場の先生方は定型発達の子どもへの教え方には詳しくても、特性のある子どもへの教え方に精通しているとは限りません。先ほどの「理解のズレ」や「間違い方」の分析には、心理職の皆さんの見方・考え方が非常に重要になってくると考えます。子どもたちが今、どんな科目でどんなことを学び、どんなことでつまずいているのか、にもぜひ興味を持っていただきたいと思います。

 さいごに、本連載をお読みいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

いかがだったでしょうか。阿部先生が大事にされているお考えが深く胸に響きました。これまで本連載を通じ、達人たちの惜しみない提案と想いに触れてきました。記事はすべてマガジンよりご覧いただけます。つまずいている子どもの力になりたいとき、強い味方になってくれるはずです。
本連載はこれにて最終回となります。かかわられた皆さまに心から御礼申し上げます。

執筆者プロフィール

阿部利彦(あべ・としひこ)
星槎大学大学院教育実践研究科教授。
専門は特別支援教育、教育のユニバーサルデザイン、発達につまずきのある子の魅力やサポート法について、講演会・教員研修に全国を飛び回る。

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