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【第二の達人登場!】ズバッと解決ファイル4U ~登場人物の気持ちを理解することが難しい子~(片岡寛仁:日本授業UD学会湘南支部長)

前回は前田先生に「個別での支援」をご紹介いただきました。続く今回は「授業での支援」です。第二の達人として片岡先生にご登場いただき、ズバッと!解決いただきます!どのような支援案が展開されるのか、達人のワザに注目です。
それでは以下より本編スタートです!

しゅん君タイプだから主人公の気持ちがわからない?

 しゅん君タイプのように「他者視点で考えることが苦手な子」「読むことに時間を要する子」は、国語の学習に苦手意識を持ちやすい傾向があります。その原因は特性からくるものだけでしょうか。少なくとも私は次のような原因があると思います。

① 作品全体の流れがよくわかっていないのに、ピンポイントで、この時の主人公の気持ちは?と問われて、よくわからない。
② 「なぜ」や「どんなことを」などの発問は難しく、考えづらい。
③ どの言葉に注目すれば主人公の気持ちが読めるのか「読み方」を知らない。
④ 一部の感性の優れた子の発言だけで授業が進み、置いてきぼり感を感じて、学習自体への意欲が低下している。

 などです。

 では、しゅんくんタイプのお子さんも楽しく、「わかった!」と参加できるような授業にするには、どう展開していけばよいのでしょうか。「誰ひとりも置いていかない授業」言い換えると「授業のユニバーサルデザイン化」を目指し、子どもたちと実際に行った4年生「ごんぎつね」の実践をもとに考えていきたいと思います。

解決ファイルロゴ

まずは、作品全体の流れを捉える(①への対応)

 主人公の気持ちは、ある一場面だけに注目をしても読み取ることは難しいです。作品全体の中で変化しているからです。その変化を捉えるためにはまず作品の大体の流れを捉えることが重要です。

 では、「作品全体を簡単に説明してください。」と子どもに問いかければよいのでしょうか。しゅん君と同じように全文を読むだけで精一杯の子はクラスに半数以上は確実にいます。その子たちにとっては、この発問は、やる気をそぐだけのものです。

<カード並び替えゲームで流れを捉える>
 私は、作品の挿絵や、伏線となる出来事などをカードに書いたものを、並び替える遊びを通して作品全体を捉えることを学習の初めの段階で行います。

片岡先生図1修正版

 カードの順番をランダムに提示すると、並び替える中で、作品の流れを確認することもできます。カードの中に、わざと赤の太文字にしたダウト文を入れておくと、子どもたちは「先生、そのカード間違っているよ。」と我先にと指摘してきます。教師の間違えを指摘することが大好きな子どもの習性を利用したものです。読むことが苦手な子どもでも、2枚目のカードのようにわかりやすいダウトがあるとすぐに食いついてきます。

 「え、どこ?ああ、この言葉。別にこのままでもいいんじゃない?」などと、わざと「とぼけ返し」をしようものなら、子どもたちは「駄目だよ!!だってさあ、もし『ゆっくり』だったら大変なことになるよ。」「そうだよ。捕まっちゃうよ。」「いや、殺されるでしょ。」などと学習に夢中になります。

発問は、HOW型からWHICH型の発問へ(②③への対応)

 作品全体の流れを捉えられると、次は、主人公の気持ちの変化を捉える学習へと進めます。多くの国語授業では、「この時のごんは、どんな気持ちなの?」とHOW型で問います。HOW型の発問は非常にレベルが高く参加できる子どもは限られてしまいます。

 それに比べ、「下のカードの時のごんの気持ちは、プラスかな、それともマイナスかな?」など簡単な2択で考えられるようなWHICH型の発問であれば、誰でも参加しやすくなります。その後に、「どの言葉に注目して、プラスだと思ったのかな?」など具体的な発問をすることで、子どもたちも負担なく主人公の気持ちを言葉を根拠にとらえることができます。

片岡先生図2

理解のずれに焦点をあてた授業を展開する(④への対応)

 実際の授業では、ほとんどの子どもは「マイナス」と答えました。「にげていきました。」という行動描写に注目したからです。ところがしゅん君タイプのAさんは「プラスでしょ。」と発言しました。どの言葉からそう考えたのかを尋ねると、注目した言葉は同じ行動描写でしたが、「鬼ごっこの時追いかけられると楽しいからだ。」と自分の経験をもとに答えました。この発言に多くの子は、え!?という驚きの反応を示しました。

 そこで私は、「今、多くの人は『マイナス』だと考えているよね。Aさんは『プラスではないか。その理由は・・・』って考えたんだよね。先生はAさんの考えは、なるほどって思ったけど、先生と同じでなるほどって思った人はいる?いや、ちょっとそれはおかしいなあって思った人はいる?」と展開しました。

 この展開で私が大事にしたのは「理解のずれ」に焦点をあてるということです。
 Aさんの発言は、一見関係ないようにも思いますが、プラスの気持ちとマイナスの気持ちという理解の「ずれ」がクラス内に生じました。授業で一番大事にするべきポイントは、このような理解の「ずれ」が起きた時です。子ども同士の理解の「ずれ」に焦点をあてた授業展開は大いに盛り上がります。授業の話題が自分事になるからです。また、「理解のずれ」を追求する中で、学びは広がり深まるからです。

 実際に、この後の話し合いでは、Aさんに賛同する子が続出し、「ごんは人にかまってほしいからいたずらをしているのだ」ということに気づくこともできました。ただし、捕まると殺される可能性もあるので、心の中では「相手にしてくれて嬉しい」というプラスの気持ちもあるけれど、今はそれどころじゃなくて殺されるかもしれないというマイナスの気持ちの方が大きいだろうという結論が出ました。しゅん君タイプのAさんがいなければこの学びはなかったのかもしれません。

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理解のずれが生じた時、教師は困り感のある子の立場で授業を展開する(③④への対応)

 1枚目を残して授業をしていると、「先生、1枚目のカードは、プラスでもマイナスでもないよ。」「このカードなくてもいいんじゃない。」などと声が出てきます。主人公の気持ちがわかる言葉がないからだそうです。

 「へえぇ、『晴れた』のは、天気だけなんだね。」というゆさぶり発問を子どもたちにしました。すると感性の鋭いBさんが気づきました。「そうか、わかった!天気のことじゃないよ。ごんの気持ちだよ!ほら、晴れてんじゃん。」と嬉しそうに発言しました。すると、その発言をきっかけに数人の子どもが「あ、そうか。本当だ。」と言い始めました。

片岡先生図3

 当然しゅんくんやスローラーナータイプの子どもたちは、Bさんたちの「わかった」と言っている事は全く分からず、困惑していました。ここに、理解の「ずれ」が生じました。

 そこで私は、「Bさんたちは、気持ちがわかるっていっているけれど・・・。先生と同じで、Bさんたちの言ってること、よくわからないなあという人はいない?」と問いかけてみました。

 ここで大事にしたのは、理解に時間を要する子や、学習に苦手意識を持っている子の立場で展開をしたということです。この時にあえてBさんに説明をさせなかったのは、授業のスポットライトを浴びるのが、一部の感性の優れた子や勘の良い子では、しゅん君のように「読むことが苦手」と感じている子は授業で置いてきぼりを感じ、学習が他人事になってしまうからです。

 私の問いに答えるように「はい。先生と一緒。Bさんの言っていることわかんない。だってどこにも気持ちは書いてないじゃん。」と発表する子どもが何人も出てきました。私はその意見にわざとのりました。「そうだよね。このカードのどこにも気持ちがわかる言葉はないもんね。」と。この後はご想像の通り、このカードから気持ちが「読み取れる派」と「読み取れない派」で議論は大盛り上がりでした。議論をまとめるようにBさんたちが丁寧に「晴れるというのは、気持ちも晴れる、つまりいたずらができるぞ!!というプラスの気持ちになっているんだよ。」と説明をしてくれました。

 授業の最後に教師が、「景色を通して主人公の気持ちを表す表現を『情景描写』というんだよ。人の気持ちを景色や天気で表すことができることに、今日は気づくことができたね。」と確認しました。

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 大事なのは、どんな言葉に注目すると主人公の気持ちを読み取ることができるかということを明確にすること、つまり「読み方」を子どもたちに獲得させることです。3年生であれば「行動描写」、4年生は「色彩語」「心内語」「情景描写」に注目することで主人公の心情の変化や気持ちを読むことができます。

 しゅん君タイプ、こだわりタイプ、マイペースタイプ、敏感タイプ、やんちゃタイプなど様々なタイプの子どもがいてくれるからこそ、多様な「理解のずれ」が生じます。その「理解のずれ」を大事にすることで学習は自分事になります。みんなで、ああじゃないこうじゃないと相談しながら追究する中で、学び方(読み方)を子どもたちは獲得していきます。

いかがだったでしょうか?カードを用いて楽しむ授業の裏側では、みんなが学びを得られるようにする達人のワザがありました。「ズレ」を大切にする視点も大事な学びになったのではないでしょうか。
次回はこのケースのまとめとして、阿部利彦先生に再度ご登場いただき、ズバッと解説!していただきます。
次回配信は11月18日(水)を予定!ぜひお楽しみに!

執筆者プロフィール

片岡寛仁(かたおか・のぶひと)
日本授業UD学会湘南支部 支部長。神奈川県公立小学校 教諭。
特別支援教育、学級経営、授業のユニバーサルデザイン等を主として研究と実践を行っている。
日本LD学会/日本授業UD学会所属。
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