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批判心理学への招待:心理学化した新自由主義社会における研究と人間の福祉【後編】(山野美容芸術短期大学教授:五十嵐靖博) #誘惑する心理学

今日,心理学という学問は私たちの生活になじみ深いものとなっており,日常生活の様々な場面で心理学という言葉を目にします.現代心理学が成立して100年以上がたった今,主流の心理学の営みを内省するオルタナティブな研究・実践が広まりつつあります.この批判心理学と呼ばれる潮流について,理論心理学の立場から批判心理学に取り組まれている五十嵐靖博先生にご解説いただきました.今回の後編記事では,批判心理学とその研究者たちの最新の動向,批判心理学に取り組み実践するためにはどうすればよいかについてご解説いただきました.また,批判心理学を学ぶのに役立つリソースをご紹介いただきました.

キーワード:心理学化,国際批判心理学運動,メタ学問としての理論心理学,リフレキシビティ,微視的批判心理学運動

前編はこちら:https://www.note.kanekoshobo.co.jp/n/nd9331e88f8c0


2. 批判心理学の展開

2-1. 国際批判心理学運動:キーワードが共有される意義

心理学史を振り返ると,批判心理学という言葉が知られ始めた契機は,1970年代に西ドイツと周辺の国々において,ドイツ批判心理学(ベルリン学派)が注目を集めたことでした.ドイツ批判心理学はマルクス主義の立場から抜本的に新しい心理学を構想しました(ホルツカンプ・百合草・白井,2013).1990年代半ばからひとつの学派を越えて,批判心理学の名のもとで欧米の心理学者を中心に国際的なネットワークが築かれ,ラテンアメリカやアフリカ,アジアの批判心理学者も参加して国際批判心理学運動が興りました.

今日までに批判心理学に関する多数の教科書や概説書が刊行され,ハンドブックや事典が多くの読者を得ています.関心をおもちの方は文末の推薦図書のリストをご覧ください.批判心理学の学術誌としてAnnual Review of Critical Psychology,Subjectivity: International Journal of Critical Psychology,Awry: Journal of Critical Psychology(https://awryjcp.com/index.php/awry),Journal of Critical Psychology, Counselling and Psychotherapy(https://egalitarianpublishing.com/jcpcp.html)などが刊行されています.Annual Review of Critical Psychology誌では日本を含む世界の多くの国・地域における批判心理学の動向を展望する特集が2度,刊行されました(Dafermos, et al., 2006; Dafermos, et al., 2013).

また「批判心理学の概念」叢書は今,世界各地で行われている批判心理学研究を発表するモノグラフです(https://www.routledge.com/Concepts-for-Critical-Psychology/book-series/CONCEPTSCRIT).2012年から現在まで,45冊のモノグラフが刊行されました.

こうして20世紀末から多くの国・地域で多様な心理学実践に取り組む心理学者が,批判心理学というキーワードを共有して,その名のもとで活動するようになりました.もちろん以前から,前編で述べた批判心理学の2つの目標(人間の福祉や幸福への貢献,心を研究する学問の推進)をめざして活動した心理学者が,世界各地にいたことでしょう.たとえば日本では1960年代末から日本臨床心理学会において,心理テストや心理療法の加害性を反省して「専門家による臨床心理学的関わりは,心理テストやカウンセリング等を受ける立場の人々の状況を考えずに行われているため,カウンセリング等を受ける人々を支配・ 抑圧しているのではないかといった疑問や問題性」をもち,心理臨床業務の総点検が行われました(日本臨床心理学会のウェブサイト〔http://nichirinshin.info/about〕から引用).このように自分が専門とする心理学が抱えている重大な問題を自覚することが,批判心理学の出発点です.

臨床心理学であれ他の専門領域であれ,ある心理学者が自覚した問題は,世界各地で活動するさまざまな専門領域の批判心理学者が取り組む問題と原因や背景を共有しています.日本臨床心理学会会員が問題視した心理学的生産物の加害性や,普遍的で客観的な科学的心理学だと言われている欧米の主流心理学の限界,新自由主義のもとで新植民地主義のツールとして心理学が社会諸セクターで適用される状況など,国境を越えて心理学者は共通する問題に直面しています.それらに取り組む諸実践が批判心理学だという認識が広まり,研究者の協働とネットワーク化が進んで20世紀末から国際批判心理学運動が始まりました.

各々の批判心理学者が活動する文脈において,おそらくそうした考えは少数派でしょう.心理学界や社会の主流のただ中で孤立して活動を続けるのは容易ではありません(Sloan, 2000).しかし,批判心理学というキーワードが共有された結果,上記のような世界各地における諸活動が同一の名のもとで可視化されました.現在ではネットワーク化と協働が持続的に行われているため,認知行動主義などに比べて圧倒的なマイノリティの立場に置かれていますが,国際心理学界において今後,批判心理学が消え去ることはないと思われます.心理学が重大な問題を抱えていることが明らかであり,その解決を目指す心理学者が世界各地で批判心理学の名において連携して心理学実践を行っているからです.この点で批判心理学は心理学に取り組む価値や姿勢,またそれらを共有する研究者のムーブメントだと言えます.

2-2. 「批判的学問」の系譜につながる批判心理学

以上の説明で批判心理学とは何か,世界各地で近年,批判心理学が活発になったのはなぜか,概略を理解していただけたでしょうか?「批判」という言葉はネガティブな,生産的なものでないような含意を帯びています.このため「批判心理学は何だか怖い」といったイメージをもたれることもあるようです.

しかし,心理学であれ他の学問であれ学問は元来,既存の知識を批判的に検討して新しい知識を生み出すという意味で,批判的な知的活動です.心理学と近しい社会科学の諸学問では,批判教育学や批判社会学などが既に確立されています.遅ればせながら心理学界に批判心理学が登場したことは,心理学という学問が一定の水準以上に発展し成熟しつつあることを示しています.この意味で心理学者にとって,喜ぶべきことだと考えられます.

2-3. 理論心理学:批判心理学者が共有するリソース

心理学が抱えている問題に気づき,その解決を目指すとき,多くの批判心理学者が心理学のメタ学問である理論心理学を活用しています.研究や心理臨床実践や心理学的生産物の社会における適用等について現在,何が起きているのか,どのような影響が生じているのかなど現行の心理学を「脱構築deconstruct」して解決すべき問題を明らかにし,その問題が生じた歴史や社会的要因が作用する過程を「再構成reconstruct」して原因を究明します.そして今とは異なる心理学を新たに「構築construct」するうえで,理論心理学が役に立ちます.心理学の歴史や哲学や社会学を検討して,数多い心理学の理論や研究方法論の比較研究を行い,理論構成に影響を与える諸要因を研究して得られた成果が,批判心理学の理論的資源になっているのです(Martin et al., 2015; Teo, 2019; 五十嵐,2004).

国際理論心理学会(International Society for Theoretical Psychology)に多くの国・地域から批判心理学者が参加しています.カナダのヨーク大学には心理学史と理論心理学,批判心理学を専攻する大学院プログラム(Historical, Theoretical, and Critical Studies of Psychology)が開設され,活発に研究と教育が行われています.

2-4. 批判心理学の課題

しかし批判心理学も問題を抱えています.現在,もっとも大きな課題は批判心理学者が自分自身を批判的に検討することです.既存の心理学や社会を批判する心理学者は,まず自分を批判的な視点でみる必要があります.このリフレキシビティを実践できるか,一人ひとりの批判心理学者が問われています(五十嵐,2021).

実際,批判心理学者だと自称する人の振る舞いに,自文化中心主義や自学問中心主義,私的利益中心主義など3つの中心主義による悪影響がみられる場合もあります.「自分は本当の批判心理学を知っている」,「私の古くからの友人である〇〇先生こそ,批判心理学で重要な仕事をしている」等と主張して他のアプローチを排除したり,他の心理学者や社会を批判するだけで建設的な活動を行わなかったりする例もみられます.批判心理学がある程度,普及した国・地域では心理学や社会に前向きな変化をもたらすことなく,ただ批判を繰り返す心理学者への批判の声も聞かれます(Dafermos et al., 2013).リフレキシビリティを実践することは批判心理学者にとって現在,喫緊の課題として残されています.

3.批判心理学を活用しよう!

3-1. 日常から始まる批判心理学

上述のように心理学と心理学を必要としている社会は今,さまざまな問題を抱えています.各々の心理学者が専門とする領域で日々,活動する過程で学問の発展や福祉への寄与が妨げられている事例を知る機会があるかもしれません.20世紀末以降のグローバル化と新自由主義の時代に心理学化が高度に進行した日本社会において今後,いっそう多くの問題が起こることも予想されます.こうした状況で心理学者が自らの良識に従って行動すると,批判心理学が自然発生するのです.

もしあなたが心理学にかかわる重要な問題をみいだしたなら,それを解決するために一歩,踏み出してみてはいかがでしょうか? 心理学や心理学界を変える,心理学が営まれている社会を変える,というのはあまりに大きな問題です.もちろん容易なことではありません.しかし,絶望する必要はありません.

3-2. 巨視的批判心理学運動と微視的批判心理学運動

心理学にかかわる重要な問題を解決しようと試みる心理学者は実際,何をしているのでしょうか.批判心理学者が行う諸実践を巨視的批判心理学運動と微視的批判心理学運動に分けて考えると,多様な活動を整理できます(Igarashi, 2019).

さまざまな社会セクターで心理学的生産物が濫用され,人々の福祉や幸福が阻害される事態を防ぐには,おそらく社会構造や政治経済のあり方を変える必要があります.また科学的心理学が陥りやすい過度の科学主義や3つの中心主義などによる弊害を防ぐには,心理学や心理学者,心理学界が変わらなければなりません.この大きな問題の解決をめざすのが,巨視的批判心理学運動(macro critical psychology movement)です.

量的研究や質的研究を行い,研究の成果を社会課題に適用するために当事者や利害関係者と連携して政治的実践を行うなど,大規模な活動を行います.あるいは量的研究に偏重する心理学界の状況を変えるために,質的研究を重んじる心理学者が協働して学会を組織し,研究書や学術雑誌や教科書を刊行するなどして質的心理学の意義を周知し,心理学教育に質的研究を加えるなどの活動を行うことができます.20世紀末以来,今日までの間に日本の心理学界では一定の程度まで,こうした質的研究運動が成功を収めました.

しかし目の前にある心理学や,収益や管理統制を目的として心理学を活用する社会を変える必要があると考えたとしても,それは容易なことではありません.ひとりの心理学者ができることは限られています.一生懸命に努力しても目に見える変化は起きず,自分はほとんど無力だ,と感じるかもしれません.しかし各々の持ち場で今,できることをすることが長い目でみて大きな変化につながります.大学に所属する心理学者なら研究や教育で批判心理学を実践できます.例えば科学的心理学にとって質的研究も有用であり,貧困や格差など今日,日本社会が直面している重要な課題を科学的心理学の立場から研究できることを,自らの研究教育活動を通して示すこともできるでしょう.

心理臨床の現場で活動する臨床家なら,例えばクライエントが抱える心の問題をその内面だけに帰属させる過度の個人主義を離れて,社会構造や政治経済の影響をよく考慮するなど,心理療法のあり方を再検討できます.このように一人ひとりの心理学者が自分の持ち場で日々,取り組む活動が微視的批判心理学運動(micro critical psychology movement)です.あなたの場合はいかがでしょうか?

私が本稿を執筆したおもな動機は,心理学のメタ学問の立場から批判心理学に取り組むものが今,日本で心理学にたずさわる読者に批判心理学を紹介すれば,長い目でみて変革につながるのではないかと考えたからです.自分が今,できることをするという私なりの微視的批判心理学運動です.

3-3. ネットワークを築くこと,協働することの重要性

心理学や心理学を必要としている社会が抱えている問題を解決するには,同じ目的を共有する他の人々とネットワークを築き,協働することが不可欠です.もし,ある心理学者が心理学にかかわる重大な問題を見いだしたなら,おそらく他にも同じような問題意識をもつ心理学者がいることでしょう.同じ時代に同じ社会で心理学に取り組んでいれば,その問題に気づいた心理学者はひとりだけではないと思われます.問題意識や目的を共有する心理学者や他領域の研究者,当事者,利害関係者等と連携すれば,変革へ向けて為しえるレパートリーが増えます.

こうしたネットワーク化の成功例として,イギリスのディスコース・ユニット(https://discourseunit.com/)があげられます.1990年にディスコース分析などの質的研究を推進し,研究成果を活用して社会改革を促すことを目的として,マンチェスターでふたりの若い質的心理学者(エリカ・バーマン教授とイアン・パーカー教授)によって設立されました.そこにイギリス各地の研究者が加わり,さらに欧米やラテンアメリカや日本やグローバルサウスの研究者が参加する大規模なネットワークへと発展しました.メンバーは互いに大学院生の指導を行うなど変革を目指して新たな立場から心理学教育を推進し,また差別や格差,抑圧など特に社会弱者に不利益をもたらす政治経済政策に対抗する活動を長年,実践してきました.ネットワークを活かして執筆者を募ってAnnual Review of Critical Psychology誌や多くの研究書や教科書(Banister et al, 1993)を刊行しました.今,世界各地で行われている批判心理学研究を刊行するモノグラフ「批判心理学の概念」叢書(https://www.routledge.com/Concepts-for-Critical-Psychology/book-series/CONCEPTSCRIT)も,おもにこのネットワークに緩やかにつながる研究者が執筆しています.2020年に東京で開催された東アジア批判心理学会議(https://2020criticalpsychologytokyo.jimdofree.com/)を含む多くの学術会議を,ディスコース・ユニットのメンバーが支援してきました.その発端は1990年以来,批判心理学の重要性を自覚したイギリスのごく少数の心理学者が,マンチェスターの自分の持ち場で地道に活動を続けたことでした.

日本で心理学に取り組む私たちも,こうした姿勢で微視的批判心理学運動を継続すれば,少なくともある程度は心理学と社会に変化をもたらすことができると考えられます.

さらに学びたい方のために

最後に,批判心理学を学ぶうえで役に立つ書籍,ウェブサイトを紹介します。

〇日本語で手軽に読める批判心理学書
いずれもイギリスで活動する批判心理学者の著書です.

  • Banister, P., Burman, E., Parker, I., Taylor, M., & Tindall, C. (1994). Qualitative methods in psychology: A research guide. Open University Press.
    (バニスター,P.,バーマン,E.,パーカー,I.,テイラー,M.,ティンダール,C. 五十嵐 靖博・河野 哲也(監訳)(2008).質的心理学研究法入門─リフレキシビティの視点─ 新曜社)

  • Parker, I. (2005). Qualitative Psychology: Introducing Radical Research. Open University Press.
    (パーカー,I. 八ッ塚 一郎(訳)(2008).ラディカル質的心理学―アクションリサーチ入門― ナカニシヤ出版)

  • Burman, E. (2008) Deconstructing developmental psychology (2nd ed). Routledge.
    (バーマン,E. 青野 篤子・村本 邦子(監訳)(2012).発達心理学の脱構築 ミネルヴァ書房)

  • Burr, V. (2015) Social constructionism (3rd ed.). Routledge.
    (バー,V. 田中 一彦・大橋 靖史(訳)(2018).ソーシャル・コンストラクショニズム─ディスコース 主体性 身体性─ 川島書店)

  • Willig, C. (2001) “Introducing qualitative research in psychology: Adventures in theory and method”, Buckingham: Open University Press.(ウィリッグ,C. 上淵 寿・大家 まゆみ・小松 孝至(訳)(2003).心理学のための質的研究法入門―創造的な探求に向けて― 培風館)

〇批判心理学の入門書や教科書

  • Hook, D. (Ed.). (2004). Critical psychology. Lansdowne, South Africa: UCT Press.
    心理学が長年にわたって人種隔離政策を支えた負の歴史をもつ南アフリカで発展した批判心理学を知ることができます.

  • Fox, D., Prilleltensky, I., & Austin, S. (Eds.). (2009). Critical Psychology: An introduction (2nd ed.). SAGE.
    おそらく世界で最もよく読まれている批判心理学の教科書です.

下記の3冊は批判社会心理学の教科書です.

  • Gough, B., McFadden, M., & McDonald, M. (2013). Critical social psychology: An introduction. Red Globe Press.

  • Hepburn, A. (2003). An introduction to critical social psychology. SAGE Publications Ltd. https://doi.org/10.4135/9781446218884

  • Tuffin, K. (2004). Understanding critical social psychology. SAGE.

健康心理学ではさまざまな批判心理学的アプローチが早くから採用されました.読みやすく内容豊富なよい教科書が刊行されています.

コミュニティ心理学においても批判心理学的アプローチが活用されています.下記の教科書から批判的コミュニティ心理学の概要を知ることができます.

臨床心理学や心理療法に関心をお持ちの方には下記がお薦めです.

  • Loewenthal, D. (Ed.). (2015). Critical psychotherapy, psychoanalysis and counselling. Palgrave. Macmillan UK. https://doi.org/10.1057/9781137460585

  • Cromby, J., Harper, D., & Reavey, P. (2013). Psychology, mental health and distress. Palgrave.

  • Cromby, J., Diamond, B., Kelly, P., Moloney, P., Group, T. M. P., & Priest, P. (2022). Outsight: Psychology, politics and social justice. PCCS Books.

  • Newnes, C. (2014). Clinical psychology: A critical examination. PCCS Books.

教育心理学への批判心理学の立場からの入門書です.

  • Williams, A. J., Billington, T., Goodley, D., & Corcoran, T. (2016). Critical educational psychology. Wiley.

批判心理学を現実の生活のなかで実践する方法を詳説するテキストです.権力や格差,社会正義の視座から具体的な手引きが示されています.

  • Prilleltensky, I., & Nelson, G. (2002). Doing psychology critically: Making a difference in diverse settings. Palgrave Macmillan/Springer Nature.

批判心理学や理論心理学の視点から記述された心理学史のテキストです.

  • Walsh, R., Teo,T., & Baydala, A. (2014). A critical history and philosophy of psychology: Diversity of context, thought, and practice. Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/CBO9781139046831

〇批判心理学のハンドブックと事典,論文集

  • Parker, I. (Ed.) (2015) Handbook of critical psychology. Routledge. https://doi.org/10.4324/9781315726526
    批判心理学の多様なアプローチや研究領域,世界各地における動向を手軽に知りたい方にお薦めです.

  • Gough, B. (Ed.). (2017). The Palgrave handbook of critical social psychology. Palgrave Macmillan. https://doi.org/10.1057/978-1-137-51018-1

  • Brown, N. J. L., Lomas, T., & Eiroa-Orosa, F. J. (Eds.). (2017). The Routledge international handbook of critical positive psychology. Routledge. https://doi.org/10.4324/9781315659794

  • Teo, T. (Ed.) (2014). Encyclopedia of critical psychology (4 vols.). Springer.
    批判心理学の百科事典です.専門用語や概念などが事項ごとにコンパクトにまとめられています.

  • Parker, I. (Ed.) (2011). Critical Psychology (Four Volume Major Work). Routledge.
    編者が選んだ批判心理学の主要論文を4巻にまとめた論文集です.

ドイツ批判心理学(ベルリン学派)を主導したホルツカンプの英訳論文集です.分かりやすい解説が付されており,入門書としてお薦めです.

ラテンアメリカで発展した解放の心理学の動向を知ることができます.

〇役に立つウェブサイト

Discourse Unit
イギリスの批判心理学者パーカー(Ian Parker)とバーマン(Erica Burman)が設立したディスコース・ユニットのウェブサイト.Annual Review of Critical Psychologyの全論文が掲載されています. https://discourseunit.com/

Critical Psychology: A Resource Site for Scholars, Activists, and Practitioners by the Critical Praxis Cooperative
米国で活動する批判心理学者ベシャラ(Robert Beshara)が運営するウェブサイト.批判心理学に関する多くの情報を収集し整理して掲載しています. https://sites.google.com/view/criticalpsychology/home

Advances in the History of Psychology
批判心理学や理論心理学、心理学史研究を専門とする大学院教育プログラムをもつヨーク大学(カナダ)の心理学史研究者が開設したブログ.心理学史に関わる最新の研究情報が幅広く掲載されています. https://ahp.apps01.yorku.ca/

English language Liberation Psychology Network
ラテンアメリカで発展した解放の心理学を英語で発信するために,イギリスの批判コミュニティ心理学者,マーク・バートン(Mark Burton)が運営するウェブサイト.解放の心理学に関する広範なリソースが集成されています. https://libpsy.org/

引用文献

  • Banister, P., Burman, E., Parker, I., Taylor, M., & Tindall, C. (1994). Qualitative methods in psychology: A research guide. Milton Keynes: Open University Press.
    (バニスター,P.・バーマン,E.・パーカー,I.・テイラー,M.・ティンダール,C. 五十嵐 靖博・河野 哲也(監訳)(2008).質的心理学研究法入門―リフレキシビティの視点― 新曜社)

  • Dafermos, M., Marvakis, A., & Triliva, S. (Eds.). (2006). Critical Psychology in a changing world: Contributions from different geo-political regions (Special issue). Annual Review of Critical Psychology. https://discourseunit.com/annual-review/5-2006/

  • Dafermos, M., Marvakis, A., Mentinis, M., Painter, D. and Triliva, S. (Eds.) (2013). Critical psychology in a changing world II: Building bridges and expanding the dialogue (Special issue)., 10. https://discourseunit.com/annual-review/10-2013/

  • 五十嵐 靖博(2004).現代理論心理学 石川 幹人・渡辺 恒夫(編)入門マインドサイエンスの思想―心の科学のための現代哲学入門―(pp.242–252) 新曜社

  • Igarashi, Y. (2019). Tod Sloan (1952-2018)’s ‘Micro Critical Psychology Movement’: A View and Memoir of a Japanese Critical Psychologist. Journal of Critical Psychology, Counselling and Psychotherapy, Special issue: For Tod Sloan, 19(4), 236-241.

  • 五十嵐 靖博(2021).批判心理学からみた社会構成主義―理論心理学的アプローチとディスコース分析,リフレキシビティ― 能智 正博・大橋 靖史(編)ソーシャル・コンストラクショニズムと対人支援の現場―理論から実践へ―(pp.101-126) 新曜社

  • ホルツカンプ クラウス,百合草 禎二,白井 利明(2014).批判心理学の基本概念 心理科学,35(2),30-39.

  • Martin, J., Sugarman, J., & Slaney, K. L. (Eds.). (2015). The Wiley handbook of theoretical and philosophical psychology. John Wiley & Sons, Ltd. https://doi.org/10.1002/9781118748213

  • Sloan, T. (Ed.). (2000). Critical psychology: Voices for change. Basinstoke, UK: Macmillan.

  • Teo, T. (Ed.). (2019). Re-envisioning theoretical psychology. Springer International Publishing. https://doi.org/10.1007/978-3-030-16762-2

執筆者プロフィール

五十嵐 靖博(いがらし・やすひろ)
山野美容芸術短期大学教授.日本心理学会批判心理学研究会代表.専門は理論心理学,批判心理学,ディスコース分析.心を研究対象とする学問の多様な側面をメタ学問的に考察し,1人称の心的経験を研究する方法論をディスコースの視点から探究している.著書に『入門マインドサイエンスの思想:心の科学のための現代哲学入門』(共著 新曜社 2004),『Handbook of critical psychology』(共著 Routledge 2015),『ソーシャル・コンストラクショニズムと対人支援の現場:理論から実践へ』(共著 新曜社 2021),訳書に『意識の神秘は解明できるか』(共訳 青土社 2001),『心を名づけること:心理学の社会的構成(上下)』(共訳 青土社 2005),『質的心理学研究法入門:リフレキシビティの視点』(共訳 新曜社 2008),『発達心理学の脱構築』(共訳 ミネルヴァ書房 2012)などがある.