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【連載】流離人(さすらいびと)のノート

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今までお書きいただいた記事が、常に好評を博していた山本高樹先生の連載が始まります。山本先生が、旅の最中に日記や思いついたことをいつも書き留めている紙のノートからのアイデアで生まれ…
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記事一覧

チャダルの記憶(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第18回

 忘れようにも、忘れられない旅がある。  インド北部、ヒマラヤ山脈の西はずれに位置する、…

神の住まう山(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第17回

 目の前に、山がある。乾いた大地からずどんと突き出した、巨大な三角錐のように見える。藍色…

崩落、泥濘、回り道(後編)(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート …

 インド北部、キナウル地方の中心地レコン・ピオから、サトレジ川沿いの街道を西に約五十キロ…

崩落、泥濘、回り道(前編)(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート …

 何日かぶりに晴れた空の下、数十メートル先では、一台のショベルカーがエンジン音を低く轟か…

名もなき塑像(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第14回

 「旅先で良い写真を撮りたい時のコツについて、コラムを書いてほしい」という依頼を受けたこ…

ゲーン・ハンレーの味(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第13回

 異国を旅する時、言葉は、通じるに越したことはない。道を訊く時、宿を探す時、食事を注文す…

ピピラの丘で(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第12回

 旅先で偶然出会って、軽く言葉を交わしたくらいで、連絡先を交換するでもなく、別れて以来、それっきり。なのに、時が経っても、不思議と忘れられない人がいる。  ピピラの丘で出会った彼も、そんな人の一人だった。  メキシコ中部には、スペインがこの土地を植民地としていた十六世紀頃に、銀の採掘に伴って発展したコロニアル都市が、いくつもある。それらの中でも特に知られているのが、グアナファト。往時から受け継がれている瀟洒な欧風建築が建ち並ぶその街並は、世界文化遺産にも登録されている。  僕

国境の土産物屋(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第11回

「今まで旅した中で、一番好きな国は?」  旅好きの人同士が知り合った時、よく出てくる質問…

主なきホテル(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第10回

 二日以上の旅に出れば、誰もがほぼ必ず、宿に泊まる。すべての夜を夜行の列車やバス、船、飛…

青き氷河の底へ(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第9回

 昨夜まで降り続いていた雨に、森は、しっとりと濡れていた。  朽ち果てた木々や岩の表面は…

旅をした詩集(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第8回

 どこかへ旅に出る時は、必ず、一冊か二冊、本を持って行く。やっぱり、紙の本がいい。とはい…

辿り着けなかった岬(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第7回

 異国をしばらく旅していると、時に、油断や不注意とは関係なく、どうにも避けようのないトラ…

ハウィーのこと(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第6回

 旅に出て、行く先々で、大勢の人々に出会う。すべての人のことを憶えているわけではないけれ…

死を待つ人々の家(後編)(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第5回

 インド西部の街カルカッタ(現コルカタ)で、カトリックの聖人マザー・テレサが設立したホスピス、ニルマル・ヒルダイ(死を待つ人々の家)でのボランティア参加、二日目。  前の日と同じように、朝、マザー・ハウスに集合し、厚切りのパンとチャイの朝食をボランティア仲間といただく。その後、同じ施設に行く人たちとともに路線バスに乗り、カーリー・ガートに向かう。  人間は、どんな環境に置かれても、ある程度はそれなりに慣れることのできる生き物だ、と思っていた。あの時の僕も、カーリー・ガートでバ