マガジンのカバー画像

特集 自己と他者 異なる価値観への想像力

14
今回の特集は「自己と他者 異なる価値観への想像力」です。異なる価値観と出会ったときに、私たちの心に何が生じるのでしょうか。その心にどのように向き合えばよいでしょう。広く他者との違… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

異なる価値観の人との対話のために(東京学芸大学教育学部教授:松尾直博) #自己と他者 異なる価値観への想像力

人の気持ちを慮る力は弱くなっているのか? 「今の子どもは自分勝手だ」「自己中心的な子どもが増えた」という意見を聞いた時、皆さんはどう思うでしょうか。また、「今の大人は自分勝手だ」「自己中心的な大人が増えた」という意見を聞いた時、皆さんはどう思うでしょうか。「そうそう、そうだよね」と思う人もいれば、「いや、そんなことはないよ」と思う人もいるでしょう。

 『児童心理』(金子書房)の1969年12月号

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

ASD当事者の間にある多様性を語ることの難しさ(ASD当事者:高森明)#自己と他者 異なる価値観への想像力

はじめに ASD(自閉症スペクトラム)当事者である筆者が示したいことは、ASD当事者がASD当事者同士の間にある多様性と異なる価値観に対して想像力を持つことの難しさである。
 筆者は10年ほど前まで、主に自らの経験を土台にして多様な存在の一つであるASD当事者について積極的に情報発信を行ってきた。しかし、その方法ではASD当事者の間にある多様性を説明することはとてもじゃないができないと考え、自己語

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

自己と他者と傷つき(金沢大学教授:岡田努先生)#自己と他者 異なる価値観への想像力

傷つくことを恐れる関係性 現代の日本の若者は、自分が傷つくことを恐れ、距離をとった関わりになってしまう、あるいは他人からどのように見えるかを気にして、自分の本音を出せなくなっている、とよく言われます。
 これは本当のことなのでしょうか?そして、そういう付き合い方は本当に好ましくないことなのでしょうか?ここではそうした視点から現代の若者の対人関係について述べてみたいと思います。

そもそも若者の人間

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

異なる価値観:自己否定を打ち崩す出会い(兵庫教育大学大学院教授:中間玲子先生)#自己と他者 異なる価値観への想像力

私たちは自分の価値を感じたいと思ってしまう 私たちの心には自分という存在の価値を確認したい気持ちがあります。自分の価値を確認できる経験は積極的に求め、それを否定するような経験には無意識に抵抗する。私たちの心にはこのようなしくみがあるとされます。自分として存在しなければならない人間にとって、その気持ちは前向きに生きるために求めざるを得ないものなのでしょう。

 とはいえ、そのような思いがいつも満たさ

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

自分の気持ちが分からないときに(龍谷大学教授:内田利広先生) #自己と他者 異なる価値観への想像力

自分が一番よく分からない 「自分のことは自分がよく分かっている」と言われますが、本当にそうでしょうか。実は自分の気持ちや行動は、自分が一番分かっていないということもあります。
 男の子がある女の子にいつもちょっかいを出し、からかっては意地悪をしている様子を見て、周りの子は、男の子がその女の子のことを好きなのはよく分かりますが、本人はその気持ちが分からないということがあります。実は、人の心は、他人の

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

自己と他者-異質な感覚・価値観への橋渡し(聖ウルスラ学院理事長・日本語検定委員会理事長:梶田叡一先生) #自己と他者 異なる価値観への想像力

 私の場合、小さな頃から「自分は自分、他の人とは違っている」という感覚を持っていた。自分が好きなものを他の人は好きでないことがある、他の人が面白がってやっていることが私には面白くないことがある、などといった違いである。

 自分と他の人とは違っているという感覚は、それぞれが独立した個体として生きていることから言って、当然至極のことと言っていい。自分の体験したこと、実感し納得していること、これは自分

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

「夢という眠りの中の自分と他者」(東洋大学社会学部社会心理学科・教授:松田英子) #自己と他者 異なる価値観への想像力

「夢という眠りの中の自分と他者」 あなたは昨晩みた夢を覚えていますか

 皆さんは毎晩みる夢を覚えていますか?ここ数年夢なんてみていないよという方もいらっしゃるでしょう。一方で、毎日のように夢をみるという方や、一晩に2個も3個も夢をみているという方もいます。時には夢が現実に起きたことのように生々しすぎて、目覚めたとき眠っていないかのように疲れているという経験がおありの方もおられるでしょう。

 1

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

子どもや若者が「地域」という他者に出会うとき:地域交流活動から見えてきたこと(和光大学教授:菅野 恵) #自己と他者 異なる価値観への想像力

地域での他者との出会いは、多様性を知る絶好の機会 コロナ禍の長期化で、多くの大学は今までに経験したことのないオンライン授業を導入せざるをえなくなり、学生生活は急変しました。大学教員の立場では、授業動画の録画に追われながら、コロナ対策の会議メンバーとしてリモート会議に出席し、難しい決断を迫られ疲弊する日々でした。怒涛の日々でしたが、コロナ以前からルーティーン化していた毎朝のウォーキングに加え、地域で

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

自分を知るため、成長させるために、他者はどのように必要か(学校法人桐蔭学園理事長、桐蔭横浜大学教授:溝上慎一)#自己と他者 異なる価値観への想像力

1.自分を知るために比較する他者 人は基本的に、他者がいなければ自分を知ることはできない。

 私の身長は178cmであるが、これが世の中で高いのか低いのかという自己理解は、他者との比較があってこそ得られるものである。古くL. フェスティンガー(1919-1989)が自己理解に伴う「社会的比較」と呼んだものである。そして、この力学を他の自己の側面、能力(頭がいい、足が速い)や関係性(優しい、人に厳

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

オンラインで他者とつながる時に大事なことは?(東海大学文明研究所所長:田中彰吾) #自己と他者 異なる価値観への想像力

生活の一部になったオンラインの会話 コロナ禍が始まって二年以上が経ちました。この間にオンラインでの会議や授業が一気に増え、生活の一部に定着したという読者もきっと多いでしょう。私もその一人です。2020年の3月ごろからZoomやMicrosoft TeamsやGoogle Meetを使う機会が急激に増え、大学の会議はTeamsで、ライブ配信の授業はZoomで、というのが当たり前になりました。また、研

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

異なる他者とわかりあうために:ASDの視点に立つことの重要性(青山学院大学准教授:米田英嗣)#自己と他者 異なる価値観への想像力

はじめに 異なる他者とわかりあうために何が必要でしょうか。おそらく、想像力、思いやり、寛容さ、経験、共感性などの意見が出てくると思います。それでは、共感性とは、いったい何でしょうか。共感性を育てることが大切だという本は多く出版されていますし、共感性は人間関係において必要不可欠なもので、どのようにしたら共感性を高めることができるのか、日々考えていらっしゃる方もいらっしゃると思います。また、差別やいじ

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

バター茶の味について思い巡らすこと(著述家・編集者・写真家:山本高樹)#自己と他者 異なる価値観への想像力

 チベット文化圏で幅広く飲まれている飲み物の一つに、バター茶がある。チベット本土ではスーチャ、インド北部のラダックではグルグル・チャなどと呼ばれている。

 いつ頃からチベットでバター茶が飲まれるようになったのか、その始まりは定かではない。11世紀頃、インドの高僧アティシャが西チベットのグゲ王国を訪れた際に、王から献上されたバター茶を飲んだところ、長旅で消耗していた体力と気力がみるみるうちに回復し

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

親子の関係性における「自己と他者」:情緒的利用可能性の大切さ(東京大学教授:遠藤利彦)#自己と他者 異なる価値観への想像力

行き過ぎた「敏感性」の危うさ 従来、発達心理学の領域では、子どもの健全な心の発達を支え促す養育者側の要件として「敏感性」の重要性が強調されてきました。平たく言えば、敏感性とは、養育者が子どもの心身の状態および表情や発声といったシグナルを的確に読み取り、素早く応答してあげることを指して言います。そして、現にこれまでの多くの実証研究において、養育者の敏感性の高さが、概して、子どもとの安定した関係性の構

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。

コーダという子どもたちのこと:きこえない親をもつきこえる子ども(中津真美:東京大学バリアフリー支援室特任助教)#自己と他者 異なる価値観への想像力

「コーダ」という言葉をご存じでしょうか きこえない親をもつきこえる子どものことを「コーダ」(Children of deaf adult/s:CODA)と呼ぶことがあります。両親ともきこえなくても、どちらか一方の親だけがきこえなくても、また、親のきこえの程度や、親がろう者であるか難聴者であるかにも関わらず、きこえる子どもは皆コーダと定義されます(CODA International)。ここでもまた

もっとみる
応援ありがとうございます。ぜひフォローもお待ちしています。