「こころ」のための専門メディア 金子書房

「こころの健康」のための情報発信や、心理検査を開発・販売しています。 そのほか、中の人…

「こころ」のための専門メディア 金子書房

「こころの健康」のための情報発信や、心理検査を開発・販売しています。 そのほか、中の人が色々書いたりします😊

マガジン

  • 転機の心理学

    年度末を迎え、また新たな出発となる四月となるにあたって、転機というテーマに関連した、私たちの心について、さまざまな人にお書きいただきました。

  • 連載 「わだかまり」と「とらわれ」~過去を振り払う

    心の中にいつまでも輝く宝石のような思い出ばかりがあれば、それは素晴らしいことでしょう。しかし、実際には後悔や嫌な思い出、つらい記憶、どうしても消せない恨みなどが心を占め、離れない思いに苦しむ人は、とても多いのではないかと思われます。そのような思いへの対処法について、精神科医の春日先生に様々な事例を通して、お書きいただく新連載がスタートします。

  • 【連載】流離人(さすらいびと)のノート

    今までお書きいただいた記事が、常に好評を博していた山本高樹先生の連載が始まります。山本先生が、旅の最中に日記や思いついたことをいつも書き留めている紙のノートからのアイデアで生まれた、noteの連載エッセイです。

  • 作文で変わる不登校の子どもたち~書くことで自己と対話する

    多くの不登校の子を支援してきた林先生は、子どもが作文を書くことで自分の心を見つめ、整理をつけ、不登校状態の解消につなげていく方法を考え出してきました。林先生が作文に注目するようになったきっかけ、具体的な指導方法など、林先生の作文での支援について書いていただきます。

  • 再現性危機の社会心理学

    今日の心理学は、過去の研究知見が再現されないという問題(再現性の危機)に直面しています。人間の行動を説明・予測する普遍的な命題を定立することを目的とする心理学が積み上げてきた研究成果は、砂上の楼閣に過ぎないのでしょうか。こうした問題に応えようと、心理学者たちは、過去の知見の再現可能性を確認する研究に取り組んでいます。本連載では、再現可能性をめぐる社会心理学の最新の知見を、三船恒裕先生にご解説いただきます。

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転機の心理学

年度末を迎え、また新たな出発となる四月となるにあたって、転機というテーマに関連した、私たちの心について、さまざまな人にお書きいただきました。

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大切な人を亡くした人に贈る言葉(めぐみ在宅クリニック院長:小澤竹俊) #転機の心理学

1.はじめに なぜ大切な人を亡くすと悲しくなるのでしょう?頭ではわかっていても、言葉で誰かに説明することは容易ではありません。何気ないことですが、なぜ悲しくなるのかの理由を知ると、悲しみとの向き合い方が見えてきます。  私たちは、大切な人と一緒にいることで、深い関係性の絆を形成していきます。大切であれば、あるほど、その絆は太く、強固なものになります。そして、大切な人と死別するということは、大切な人との絆が切れることです。すると、悲しい、さみしいという負の感情がわき上がってき

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人生の転機における友人関係(福岡県立大学教授:吉岡和子) #転機の心理学

 人生において友人関係が変わるとき,どのようなことが起こるのでしょうか。また,そのとき私たちは何を大切にするとよいのでしょうか。  皆さんが,友人関係が変わったと最初に感じたのは,何歳頃ですか?小学校入学後に感じた方もいるかもしれませんが,多くの人は高校卒業時に,進学や就職などで大きな転機を迎えたのではないでしょうか。また,友人関係から恋愛関係に発展し結婚する人もいれば,恋愛関係が終わった後に友人関係へ戻る人もいるでしょう。そして,結婚し子どもができると,子どもを中心とし

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幼少期における子どもの転機-家庭から集団状況へ-(東京大学教授:遠藤利彦) #転機の心理学

人生における初めての転機 言うまでもなく人は生涯過程において、様々な転機に遭遇し、その度ごとにある環境から次なる環境へと移行を余儀なくされる。その移行は、個に、時に不安などの耐えがたい負の感情をもたらすものであると同時に、それまでに経験したことのない愉悦などの正の感情や新たな飛躍と成長の機会をもたらすものでもある。多くの子どもにとっての最初の人生移行、おそらく、それは家庭内の限られた人間関係によって構成される生活状況から、様々な他者が集い交わる園における集団生活状況への移ろい

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カミングアウトと転機(文化人類学者:砂川秀樹) #転機の心理学

転機との二つの結びつき 同性が好きなこと、同性パートナーがいること、異性も同性も好きであること、あるいは、生まれたときに割り当てられた性別と異なる性自認をもっていること、そうしたマイノリティ性のあるSOGI(性的指向、性自認)に関連することを誰かに伝える動機、きっかけは実に様々だ。  しかし、LGBTQ*にとって、そうしたカミングアウトが重要な意味を持つことは間違いない。自分のSOGIをオープンにしたり、身近な人に話したりするLGBTQはずいぶん増えた。私が、1990年頃、

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連載 「わだかまり」と「とらわれ」~過去を振り払う

心の中にいつまでも輝く宝石のような思い出ばかりがあれば、それは素晴らしいことでしょう。しかし、実際には後悔や嫌な思い出、つらい記憶、どうしても消せない恨みなどが心を占め、離れない思いに苦しむ人は、とても多いのではないかと思われます。そのような思いへの対処法について、精神科医の春日先生に様々な事例を通して、お書きいただく新連載がスタートします。

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連載「わだかまり」と「とらわれ」――過去を振り払う(精神科医:春日武彦) 第5回:忘却する技術(1)

ピンポイントで忘れる 催眠術は、どれくらい効き目があるものなのでしょうか。暗示によって深層心理へダイレクトに働きかけるわけですから、神経症レベルの悩みや諸症状ならカウンセリングや認知行動療法よりも早く確実に効果を示しそうです。しかし催眠術治療を謳い文句にしているクリニックなんてあまり耳にしたことがありません。カリスマ的な催眠術治療師がいてもよさそうな気がするのですが、昨今では、治療中にセクハラを受けたなんてトラブルの真偽を巡って炎上するリスクのほうが大きいかもしれません。

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連載「わだかまり」と「とらわれ」――過去を振り払う(精神科医:春日武彦) 第4回:執着と優先順位

死ぬのが怖い 昨年、恐怖をテーマにした本を書きました。その中では「死ぬのが怖い」とそれこそノイローゼ状態になっている人たちについても言及しました。  自分がいずれ死ぬと思うともうそれに圧倒されて何も手につかない。気分を変えようとか、何か楽しいことや面白いことで気をまぎらわせようとしても、全然上手くいかない。世の中の人たちが、死を気にせずに日々を営んでいるのが信じられない。もはや自分が変なのか、それとも世間の大多数のほうが変なのか、それすら分からなくなってくる。と、そのように

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連載「わだかまり」と「とらわれ」――過去を振り払う(精神科医:春日武彦) 第3回:恨みと被害者意識

根深い恨み いつまでも延々と過去の恨みを引きずっているのは、どこか精神的に未成熟であったり、人間として不健全な印象を受けます。早い話が、潔くない。そんなことに拘泥せず、もっと前向きに生きたらどうなのかと言いたくなる。もっとも江戸時代には仇討ちなんて制度があったわけで、そうなると武士は「雄々しさ」を装いつつも、実は爽やかさとは縁の遠い存在だったのかもしれません。  個人的な話を申しますと、わたしには60年経っても消えない恨みがあります。自分でも少々常軌を逸している気がしますけ

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連載「わだかまり」と「とらわれ」――過去を振り払う(精神科医:春日武彦) 第2回「世界観が揺らぐ」 

魔法の数字 かなり前のことですが、外来で摂食障害の若い女性(B子としておきましょう)をフォローしていました。体重にひどくこだわり、しかしそのことに悩んで精神科を受診したわけではありません。不眠や不安、しばしば生じる抑うつ状態などを訴えて外来を訪れたのでした。  初対面のときには驚きましたね。化粧が濃く服装はセクシーそのもので、医療機関を受診するといったイメージとは程遠い。場を弁えないというか、いささか非常識と感じざるを得ない。どんな格好をしようが本人の勝手かもしれませんが、

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【連載】流離人(さすらいびと)のノート

今までお書きいただいた記事が、常に好評を博していた山本高樹先生の連載が始まります。山本先生が、旅の最中に日記や思いついたことをいつも書き留めている紙のノートからのアイデアで生まれた、noteの連載エッセイです。

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青き氷河の底へ(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第9回

 昨夜まで降り続いていた雨に、森は、しっとりと濡れていた。  朽ち果てた木々や岩の表面は、形も色もさまざまな地衣類にみっしりと覆われていて、大気は、無数の小さな生命が囁いているような気配に満ちていた。ここ南東アラスカの一帯に広がる温帯雨林は、地球上に残る温帯雨林の約三割に相当する面積を占めている。  黒々とした葉を茂らせている針葉樹林の間を縫うように奥へと続く、一本のトレイルを辿って歩いていく。木立の隙間のところどころに、地面と平行に広がる大きな緑の葉と、棘だらけの茎を持つ植

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旅をした詩集(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第8回

 どこかへ旅に出る時は、必ず、一冊か二冊、本を持って行く。やっぱり、紙の本がいい。とはいえ、荷物はなるべく軽くまとめたいので、選ぶのはたいてい文庫本か、四六判くらいまでの本になる。  最初の海外渡航となった、中国からロシア、ヨーロッパを巡った時の四カ月間の旅では、以前別の文章にも書いたが、ロバート・キャパの『ちょっとピンぼけ』を持って行った。報道写真家の先駆けであった彼が、第二次世界大戦下のヨーロッパの戦地を旅して回った時の体験を綴ったこの本は、ユーレイルユースパスを利用して

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辿り着けなかった岬(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第7回

 異国をしばらく旅していると、時に、油断や不注意とは関係なく、どうにも避けようのないトラブルに遭遇することがある。  中国の上海からトルコのイスタンブールまで、アジアを半年ほどかけて横断する旅をしていた時。パキスタンのクエッタという街の食堂で、一人の日本人男性に出会った。その時、僕はイラン方面に向かう夜行バスの出発を待っていたのだが、その男性は僕とは逆に、イランからパキスタンに移動してきて、ここから日本を目指して、さらに東に向かうとのことだった。鼻梁のあたりに、何かにぶつかっ

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ハウィーのこと(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第6回

 旅に出て、行く先々で、大勢の人々に出会う。すべての人のことを憶えているわけではないけれど、そのうちの何人かは、時が過ぎても、姿や顔かたち、声色などを、ありありと思い浮かべることができる。  そんな風に憶えていられる相手は、人間だけに限らないのかもしれない。僕にとって、ハウィーがずっとそういう存在であるように。  米国アラスカ州の中部にある小さな町、タルキートナから、東に約20キロ。道路も何も通じていないツンドラの原野の只中に、カリブー・ロッジと呼ばれる場所がある。かつては

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作文で変わる不登校の子どもたち~書くことで自己と対話する

多くの不登校の子を支援してきた林先生は、子どもが作文を書くことで自分の心を見つめ、整理をつけ、不登校状態の解消につなげていく方法を考え出してきました。林先生が作文に注目するようになったきっかけ、具体的な指導方法など、林先生の作文での支援について書いていただきます。

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連載:作文で変わる不登校の子どもたち~書くことで自己と対話する【第6回】不登校だった先輩から後輩へのメッセージ(スクールカウンセラー:林千恵子)

 教育支援センター(適応指導教室)を巣立つ前の3月に、中学3年生に最後に書いてもらう作文があります。不登校の後輩へのメッセージです。 「自分も通い始めた頃は、この先どうしていいか分からなくてつらかった。」「(後輩は)自分の人生は終わったと思ってるんだろうな。」「少しでも後輩の役に立つならば。」と、どの子も二つ返事で引き受けてくれます。自分の歩んできた道のりを振り返っているような表情です。 紙に書いても、パソコンやスマホを使っても、絵を描いてもOKです。それぞれが自分の思いを

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連載:作文で変わる不登校の子どもたち~書くことで自己と対話する【第5回】自己決定を促す作文(教育支援センター(適応指導教室)教育相談員・スクールカウンセラー:林千恵子)

 不登校支援を始めた当初、学校復帰について考えあぐねていました。当時は、学校復帰が大きな目標とされていたのですが、私が勤務する教育支援センター(適応指導教室)では、学校復帰する子がほとんどいないという現状がありました。    「学校に戻りなさいって言われて行けるくらいだったら、こんなに苦労してないよ。」そんなふうに話す子もいました。教育支援センター(適応指導教室)で力を付けて、自分のタイミングで学校復帰を考えればいいと思っていたのですが、不登校の状態をなんとなく継続してしまう

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連載:作文で変わる不登校の子どもたち~書くことで自己と対話する【第4回】作文による自己対話がもたらすもの(教育支援センター(適応指導教室)教育相談員・スクールカウンセラー:林千恵子)

 教育支援センター(適応指導教室)で不登校支援を始めた当初、高校で再び不登校となり、退学してしまう卒業生の多さにショックを受けました。教育支援センターでは元気に活躍していた子どもたちです。高校を退学した理由も、中学校を不登校になった時と同じようなものでした。その子にとっての課題は解決されていなかったのだと痛感したものです。 「学びとケアの中間としての作文支援」に力を入れるようになって、子どもたちに大きな変化がありました。高校を中退する生徒が大幅に減ったのです。  作文による

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連載:作文で変わる不登校の子どもたち~書くことで自己と対話する【第3回】学びとケアの中間としての作文支援の方法②(教育支援センター(適応指導教室)教育相談員・スクールカウンセラー:林千恵子) 

 第二回では、「学びとケアの中間としての作文支援」の方法として、 1 宝探しのインタビュー 2 作文への思い込みから自由になり、自分なりの作文を書くこと 3 作文を介した三角形の対話 までをお伝えしました。第三回は、その続き、 4 作文の自己チェック 5 作文を講評し合い、他者の価値観に触れること についてお伝えします。  なお、事例については、個人が特定できないように、数名のエピソードを再構成しています。 1 作文の自己チェック 「作文を介した三角形の対話

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再現性危機の社会心理学

今日の心理学は、過去の研究知見が再現されないという問題(再現性の危機)に直面しています。人間の行動を説明・予測する普遍的な命題を定立することを目的とする心理学が積み上げてきた研究成果は、砂上の楼閣に過ぎないのでしょうか。こうした問題に応えようと、心理学者たちは、過去の知見の再現可能性を確認する研究に取り組んでいます。本連載では、再現可能性をめぐる社会心理学の最新の知見を、三船恒裕先生にご解説いただきます。

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第5回 ミルグラム服従実験(高知工科大学 経済・マネジメント学群 教授:三船恒裕)連載:#再現性危機の社会心理学

第二次世界大戦と社会心理学 戦争。人々が仲間と手を組み、敵対する集団の人たちに対して攻撃する。国家、宗教、人種、民族、集落、部族など、様々な集団の間で、また、人類の歴史上のかなり古くから、戦争という現象が観察されてきた。  なぜ戦争は生じるのか。これはとてつもなく大きな問いであり、その答えは様々であり、もちろん、まだ解き明かされていない部分もたくさんある。人々が他者と関わりあう中で働く心の仕組みを解き明かそうとする社会心理学では、特に初期の頃の研究は、第二次世界大戦の影響

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第4回 メディアと暴力(高知工科大学 経済・マネジメント学群 教授:三船恒裕)連載:#再現性危機の社会心理学

メディアと暴力 筆者はアニメや漫画が大好きである。最近は、いわゆる「異世界転生」モノが好きである。主人公は転生して勇者になったり魔法使いになったり、冒険者になったり商人になったり、ゾンビになったりスライムになったり。主人公やその仲間たちは剣や刀や魔法やらで敵をバッタバッタと倒していく。非常に痛快である。私もそんな世界に行けたらな〜と夢想する$${^{1}}$$。  漫画や小説といった読みものから、テレビや映画といった観るものから、あるいはゲームといった遊ぶものから、私たち

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第3回 ブレインストーミング(高知工科大学 経済・マネジメント学群 教授:三船恒裕)連載:#再現性危機の社会心理学

ブレインストーミングとは 筆者が好きな漫画のひとつ、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」にこんなひとコマがある。主人公の比企谷八幡(ひきがや・はちまん)が通う高校が、他校と合同でイベントをすることになり、比企谷はそれを手伝うことになる。他校との話し合いの場、合同イベントの内容を決めるためのアイディア出しをするところで、他校の代表が「じゃあ前回と同じくブレインストーミングからやっていこうか」と提案するのである。そして主人公はそのブレインストーミングという名の話し合いに

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第2回 説得の技法:フット・イン・ザ・ドアとドア・イン・ザ・フェイス(高知工科大学 経済・マネジメント学群 教授:三船恒裕)連載:#再現性危機の社会心理学

大学生時代のある日の出来事 筆者が大学1年生か、2年生の頃だっただろうか、英会話学校への勧誘の電話がかかってきた。いつもならばすぐに断るのだが、「一度、教室までいらっしゃって説明を受けてみませんか?」という言葉にひかれてついつい新宿まで行ってしまった。着いたのは午後1時頃だったように思うが、教室を出たのは6時か7時頃、もう外は真っ暗だったのを覚えている。帰り道、家に向かってトボトボと歩きながら、そうか、社会心理学の知識はこういうところでも活かされているのか、としみじみ思った

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