「こころ」のための専門メディア 金子書房
記事一覧
自分の間違いを認められない葛藤をどうするのか(豊岡短期大学教授:鈴木由美) #葛藤するということ
葛藤って何 皆さんは日々迷いや悩みがあると思います。葛藤する場面はどんな時でしょうか。葛藤には3種類あります。①目の前にケーキとおせんべいがあり,いずれかを選択しなければならない時,これを接近―接近の葛藤といいます。②宿題をしないといけないが,やりたくない。しかし,やらないで学校に行くと友だちに不真面目な人と思われる。どちらも避けたい葛藤で,回避―回避の葛藤といいます。③朝はもっと寝ていたいが,寝
もっとみる過労死,過労自殺をなくすために~今日いかに仕事を切り上げて帰るかという葛藤に対処する~(名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授:金井篤子) #葛藤するということ
皆さんは過労死とか過労自殺といった言葉を聞いたことがありますか?過労死は日本がいわゆるバブル景気に突入する直前の80年代初めに名付けられました。当時は過労で死ぬということがあるのだろうかとなかなか受け入れられなかったそうですが,やがて,日本社会に受け入れられていきます。今やkaroshi,karojisatsuと国際的にも通じる用語となっているのは,近年では中国や韓国でも問題になっているものの,
もっとみる第15回 観察課題について① ~観察とは「様子を見ましょう」ではない~(吉田克彦:合同会社ぜんと代表) 連載:家族療法家の臨床ノート―事例で学ぶブリーフセラピー
はじめに ブリーフセラピーの一つに、解決志向療法(ソリューション・フォーカスト・アプローチ:以下SFA)があります。SFAは次の3つの哲学に基づいた介入が行われます。
これまでの本連載を読まれた方は、この3つの哲学が、相互作用のパターンについて、「うまくいっている(良循環)なら続ける」「うまくいっていない(悪循環)なら断ち切る」とほぼ同義であることがおわかりいただけると思います。
SFAの
性的マイノリティが抱える葛藤に向き合う(埼玉学園大学特任講師:佐藤洋輔) #葛藤するということ
性的マイノリティに対する理解と現状 「性的マイノリティとは?」という質問に対して、全く想像がつかない、という人は現代では少ないでしょう。代表的なものにLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字からなる総称)がありますが、電通ダイバーシティ・ラボが2020年に行った調査からは、LGBTという言葉の浸透率は2018年調査の68.5%から80.1%にまで上昇したことが報告さ
もっとみる葛藤を生きる人を支えること、葛藤しない人から学ぶこと〜生殖・不妊心理臨床からの雑感(東京リプロダクティブカウンセリングセンター:平山史朗) #葛藤するということ
不妊を経験することの葛藤 不妊というのは、子どもを望んでいるけれども思ったように得られない状態のことですが、不妊という経験はさまざまな葛藤を引き起こします。「欲しいのにできない」という不妊そのものが葛藤状況ですし、子どもを得るために努力するのかしないのか、不妊治療という医療の手を借りるのか、どのような治療をどのくらいの期間受けるのか、などなど。これらの葛藤は不妊になって初めて経験する葛藤です。なぜ
もっとみる発達障害のある女性たちの葛藤(お茶の水女子大学生活科学部心理学科助教:砂川芽吹) #葛藤するということ
気づかれにくい女性の発達障害 近年,発達障害のある女の子や女性が,少しずつ気づかれるようになってきました。ここで「気づかれる」という表現を用いたのには理由があります。
研究者や支援者の間では広く知られていることとして,「発達障害と診断を受けている人の数は,男性が圧倒的に多い」という事実があります。ただこれは,必ずしも「男性の方が発達障害になりやすい」ことや「発達障害のある女性はさほど困難を抱え