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大切な人を亡くした人に贈る言葉(めぐみ在宅クリニック院長:小澤竹俊) #転機の心理学
1.はじめに なぜ大切な人を亡くすと悲しくなるのでしょう?頭ではわかっていても、言葉で誰かに説明することは容易ではありません。何気ないことですが、なぜ悲しくなるのかの理由を知ると、悲しみとの向き合い方が見えてきます。
私たちは、大切な人と一緒にいることで、深い関係性の絆を形成していきます。大切であれば、あるほど、その絆は太く、強固なものになります。そして、大切な人と死別するということは、大切な
連載「わだかまり」と「とらわれ」――過去を振り払う(精神科医:春日武彦) 第5回:忘却する技術(1)
ピンポイントで忘れる 催眠術は、どれくらい効き目があるものなのでしょうか。暗示によって深層心理へダイレクトに働きかけるわけですから、神経症レベルの悩みや諸症状ならカウンセリングや認知行動療法よりも早く確実に効果を示しそうです。しかし催眠術治療を謳い文句にしているクリニックなんてあまり耳にしたことがありません。カリスマ的な催眠術治療師がいてもよさそうな気がするのですが、昨今では、治療中にセクハラを受
もっとみる人生の転機における友人関係(福岡県立大学教授:吉岡和子) #転機の心理学
人生において友人関係が変わるとき,どのようなことが起こるのでしょうか。また,そのとき私たちは何を大切にするとよいのでしょうか。
皆さんが,友人関係が変わったと最初に感じたのは,何歳頃ですか?小学校入学後に感じた方もいるかもしれませんが,多くの人は高校卒業時に,進学や就職などで大きな転機を迎えたのではないでしょうか。また,友人関係から恋愛関係に発展し結婚する人もいれば,恋愛関係が終わった後に
幼少期における子どもの転機-家庭から集団状況へ-(東京大学教授:遠藤利彦) #転機の心理学
人生における初めての転機 言うまでもなく人は生涯過程において、様々な転機に遭遇し、その度ごとにある環境から次なる環境へと移行を余儀なくされる。その移行は、個に、時に不安などの耐えがたい負の感情をもたらすものであると同時に、それまでに経験したことのない愉悦などの正の感情や新たな飛躍と成長の機会をもたらすものでもある。多くの子どもにとっての最初の人生移行、おそらく、それは家庭内の限られた人間関係によっ
もっとみる青き氷河の底へ(著述家・編集者・写真家:山本高樹) #流離人のノート 第9回
昨夜まで降り続いていた雨に、森は、しっとりと濡れていた。
朽ち果てた木々や岩の表面は、形も色もさまざまな地衣類にみっしりと覆われていて、大気は、無数の小さな生命が囁いているような気配に満ちていた。ここ南東アラスカの一帯に広がる温帯雨林は、地球上に残る温帯雨林の約三割に相当する面積を占めている。
黒々とした葉を茂らせている針葉樹林の間を縫うように奥へと続く、一本のトレイルを辿って歩いていく。木
能力主義は「良いこと」もしたのか(組織開発コンサルタント:勅使川原真衣)
『「能力」の生きづらさをほぐす』はどのようにして生まれたか――まずは『「能力」の生きづらさをほぐす』をご執筆された経緯についてお聞かせください。
ありがとうございます。皆さんもそうだと思いますが、小さいときから私という人間の「評価」をいろいろと受けてきますよね。「人となり」や「能力」などと一見するともっともらしく語られるものの、それって能力の「評価」なんていう大そうなものではなく、案外、「受け